〜１８：２０の波 ページ15
大倉さんをお風呂にご案内して、厨房でご飯の準備をしていたら。
さっき、もう下ごしらえは済んだからと、お礼を言って散歩へ送り出したAさんが帰ってきて。
遅れて時間差で、濡れた髪すらもう乾いてしまった章ちゃんが、戻ってきた。
「お風呂、入ったら？ さっき大倉さんも入ってたよ」
私がそう言うと、章ちゃんは私にひとつ、キスをして。
「ごめんな、ずっと一緒におれんくて」
そう言って私の頭をそっと撫でてから、静かに奥へと消えていった。
「…おはようございます」
章ちゃんと入れ違いで。
寝ぼけ眼で階段を降りてきた、渋谷さんに挨拶をする。
「…ハラ、減ったんやけど、なんかある…？」
「…もう少しでご飯の時間なので、ちょっとだけお待ちくださいね」
そう言うと納得したようにうなずいて、ダイニングの端に黙ってちょこんと座る。
「……」
「……」
ほんとに、喋らない人、だな…。
申し訳なくなって、私は先に用意していた小鉢だけ、運んで差し出す。
「…ども」
彼はそれをちまちまと食べながら。
「…ヤス、やさしいか？」
と聞いた。
「…はい」
私は答える。
「…あいつは、アホやけど、ちゃんと行動できるやつやから」
「…はい」
「…俺よりも、人を幸せにするのに、向いてるねん」
「…渋谷さんは、Aさんと章ちゃんのこと、ご存じなんですよね？」
私の口からそのことが出たことに、少し驚いた様子で箸を止める。
「ごめんなさい、つかぬことを聞いて…二人を会わせることに、不安はなかったのかなあって…」
そう言うと、少し困ったように笑って。
「…なくはないで」
と、小さくつぶやいた。
「だったらなんで…？」
「…信じたい、から、やないかな」
「……」
「…巻き込んで、あんたには悪かったな」
そう言って、また静かに、食事に戻った。
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たまご(プロフ) - Gなさん» Gな様、コメントありがとうございます。長いお話に一緒にお付き合いいただき、本当にありがとうございました。すごくうれしいです。やすば、最高ですよね…。しばらくは彼ら二人のお話は短編以外では書けないと思いますが、今後ともどうぞよろしくお願いします！ (2018年2月22日 3時) (
レス) id: 30c6e5130b (このIDを非表示/違反報告)
Gな(プロフ) - そして雪が降る から ここまで 彼らのリアルを感じてきました。 すごく好き。ちなみに私もやすばです。 (2018年2月21日 21時) (レス) id: a5ab956501 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ひーちゃんさん» ひーちゃん様、コメントありがとうございます、長いお話すべてお読みくださったんでしょうか…。いろんな道があり、それぞれを懸命に生きることが他の誰かのためにもなっている、ということが書きたかったので、そう仰って頂けてうれしいです！ (2018年2月16日 1時) (レス) id: 42d81ca1be (このIDを非表示/違反報告)
ひーちゃん(プロフ) - コメント、失礼します。なんというか、自分を肯定できたような気がします。さらさらと表面を走っていくだけのお話ではなく、すごく刺さるお話でした。出会えてよかったです。ありがとうございました。 (2018年2月15日 1時) (レス) id: b71f457045 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ほっそんさん» ほっそん様、素敵なコメントありがとうございます…！ とりあえず毛色の違う黄色さんの新作をはじめたので、もしよろしかったらお読みいただけるとうれしいです。黒さんのお話はいつか必ず書きたいと思っておりますので、もう少々お待ちくださいね！ (2018年2月9日 12時) (レス) id: 30c6e5130b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たまご
| 作成日時：2018年2月4日 0時
