さよならの街 ページ33
店長は、私を引き止めなかった。
「そうか…」と言って、「いつでも帰ってきなよ」と肩を叩いてくれた。
大学生の夏休みは、無闇に長いから。
私は夏を、あの海の街で過ごそうと思った。
…１７歳の時から、私は走り続けてきたから。
少しくらい休んでも、許される気がした。
その後のことは、ゆっくり考えよう。
そう思っていた時。
…錦戸さんが、お店まで来てくれた。
彼はまた、不器用な優しさを発揮して…
私を引き止めようとしてくれたけれど。
「あ、もしもし、お父さん？ うん、今から帰るから、そっち着くの１１時半くらいになると思う」
私は最低限の荷物だけキャリーバッグに詰めて、駅へと向かう。
金曜日、夏の夜は、街全体がエネルギーに溢れていた。
私は人波を掻き分けながら、最後の錦戸さんの言葉を想い出す。
“…ごめん、いっこだけ、ええかな”
“…章ちゃん、もしかしたら、いっぱい間違ったりしたかもしれへんけど”
“いっぱい、ひどいことしたかもしれへんけど”
“…でも、許したってほしいねん”
“あんたにとっては、何年も前から始まっとった恋かもしれへんけど”
“章ちゃんにとっては…つい最近のことやから”
“やから…”
“…いや、ごめん。それだけ”
…彼は恐らく心の中でたくさんの言葉を浮かべて
…たくさんの言葉を消し去った。
…優しくて、分別のある、人だと思った。
駅前の交差点を渡る。
キャリーバッグがすれ違う人にぶつかり、私は謝りながら、歩く。
…章ちゃん。
どうか、安心してほしい。
あなたを恨んだことなんて、一度もない。
…ただ、私が。
ずいぶん前から、勝手にひとりで始めてしまった恋に。
少し、疲れてしまっただけだから。
逃げることを、ゆるして。
章ちゃん。
…それでも、好きだよ。
そして私はこぼれてくる涙を拭いて、改札をくぐる。
……その時ふとなぜか。
名前を、
呼ばれた気がした。
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たまご(プロフ) - あくあさん» あくあ様、本当に、コメントいただけるととてもうれしいんです…一人で不安になりながら書いているので。。。なので是非これからも、お気軽に、「お腹減った」とかでもいいので笑。よろしくお願いします！ (2018年2月4日 23時) (
レス) id: 30c6e5130b (このIDを非表示/違反報告)
あくあ - 嬉しいお言葉!!お話を読んだ後の心に響き残る感動をどうしてもお伝えしたくなって、コメントしてます。いつもお返事を頂けるのでコメントしすぎでご迷惑かな？とも思っていました(((^^;)これからも応援させてくださいね☆ (2018年2月4日 10時) (レス) id: 4e4eb3dcc1 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ペンギンさん» ペンギン様、いつも本当にありがとうございます！ その後のふたり…というか四人、番外編に書きましたので、ちょっと覗いてもらえるとうれしいです。迷ってばかりですが、今後ともどうぞよろしくお願いします…！ (2018年2月4日 2時) (レス) id: 30c6e5130b (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - あくあさん» あくあ様、本当にいつも…頭があがりません、どうもありがとうございます。あくあさんからのコメントがなかったら心折れてたかもしれません笑。今後とも何卒よろしくお願いいます！ (2018年2月4日 2時) (レス) id: 30c6e5130b (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - もチちゃん . 。さん» もチちゃんさま、コメント本当にありがとうございます！ 前作からのつながりが多かったので、初めてお読みいただいて、大丈夫だったでしょうか…今後とも仲良くしてくださるとうれしいです。よろしくお願いします！ (2018年2月4日 2時) (レス) id: 30c6e5130b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たまご
| 作成日時：2018年1月27日 14時
