嘘と勘違い ページ48
時刻は23時を回っていた。
「お会計、お願いできますか？」
かなこさんが、丁寧にそう、私に声をかける。
…感じのいい人だなと、思う。
祈りが通じたのか、章ちゃんが現れることはなくて…
私はほっとしながら、お会計に応じていた。
「ごちそうさまでした」
先に出たお友達を追いかけるように、かなこさんが店を出ていこうとする。
………
「、あのっ…！」
かなこさんは、「ん？」という表情で振り返り、
「……」
呼びとめたはいいものの、言葉をつなげることができずに黙り込む私を見て、そっと笑う。
「Aちゃん、だっけ」
「はい…」
「…ショータ君と、仲良くね」
……どういう、意味だろう。
「、えっと…っ…」
なるべく、他意のない感じで、さりげなく……！
「かなこさん、は、…」
「…ん？」
「……章ちゃんの、彼女さん、ですか…？」
っ…、なんで、聞いちゃったんだろう。
かなこさん、唖然としてる。
……どうしよう、私の気持ち、バレバレだ。
「いや、すみません、あの…っ」
「……そうだって言ったら、どうする？」
かなこさんは一瞬真顔でそう言って……
「うそ、ごめんなさい、そんなわけないでしょ、ただの友達」
すぐ、顔全体で笑って否定する。
ーーーうそだ、と思った。
たぶん、こういう時の勘は…
女に生まれた限り、鈍くなれないんだ。
…それでも隠すのは、章ちゃんが有名人だから？
それとも……私を憐れんでる…？
「まっすぐだね…ちょっとうらやましい」
少し困ったように笑った彼女は、そうつぶやいて。
たぶん、心からそう言ってくれていたと思うけれど。
今の私にはそんな言葉が、“子どもだ”と宣告されているようで、
残酷に響く。
「…自信持って、いいと思うよ」
「……え…？」
これは内緒ね、と言って、彼女は私に耳打ちをする。
「雪が降ってた気がするから…たぶん一年半くらい前かな…
ショータ君、Aちゃんて子に失恋したって、泣いてたよ」
「……」
「でも、うまくいったんだね。よかった」
“まさかこんな若い子だとは思わなかったけど”
そう言って笑って。
ドアを開き、そのまま向こうへと消えていく。
ーーー私は、混乱していた。
想い出すまでもない。
私が章ちゃんと再会したのは、
一年前の夏、私の誕生日のことだったから。
忘れ物を取りにくると言った章ちゃんは、閉店まで待っても、
現れなかった。
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たまご(プロフ) - まれなさん» まれなさま、コメントありがとうございます！まだ書き始めて3.4ヶ月しか経っていない新米作者ですが、楽しんでいただけているならよかったです…！今後とも何卒よろしくお願いします^ ^ (2018年4月8日 23時) (
レス) id: 42d81ca1be (このIDを非表示/違反報告)
まれな(プロフ) - いつもたまごさんのお話楽しみにして読んでます♪ 普通とは違う感じでまるで本当の小説を読んでるような感じがして本当にはまってます！！これからも期待してます！！ (2018年4月8日 22時) (レス) id: 77816b1cc4 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - たむこさん» たむこ様、コメントに気づかずレス遅れて本当にごめんなさい！！失礼しました！ 励ましていただいてうれしいです…なかなかうまく書けないですが見習ってがんばります！ 引き続きよろしくお願いします^ ^ (2018年1月27日 11時) (レス) id: 42d81ca1be (このIDを非表示/違反報告)
たむこ(プロフ) - たまごさん» 先輩作者だなんてとんでもないです(T_T)まだ稚拙な文しかかけない新参者ですので...！これからもご無理のないようにたまごさんのペースで書いてくださいね(^^) (2018年1月22日 16時) (レス) id: 5f35bba986 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - たむこさん» たむこ様、うう、有り難いコメント本当にうれしいです。前作は処女作らしく勢いで書けたんですが、今回難しくて悩みながら書いてます…たむこさんのように先輩作者さんたちの偉大さを思い知っております。。。今後ともよろしくお願いします！ (2018年1月21日 22時) (レス) id: 30c6e5130b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たまご
| 作成日時：2018年1月16日 14時
