波間にゆれる子どもたち【青】

自制心の行方【Side青】 ページ35

波が、寄せては返すように。


僕は黙って歩きながら、自分のこの気持ちがひとところに定まらず、

ざわざわと移り変わっていくことに、ずっと戸惑っていた。




ミニAちゃんなんて、まだほんの子どもで。

たぶん、言うても住む世界も違うし、きっと常識も違う。


どう考えても男慣れなんてしとらんやろうし、僕への気持ちも、年相応の…「恋に恋い焦がれた」ってやつ、やんな。

僕かて、そんな子に手出すほど、女の子に困っとるわけやないし。



……でも、さっき この手で、ピアスの穴 開けた時。

僕の中の制御できない部分が、暴れだしそうになったのも、事実で…。




このへん家賃、高いのに。

頑張ってバイトして、駅から遠いアパートに住んどるのも、全部、僕のためで。



ぽつぽつと会話しながら歩いとったら、たぶん、そのアパート、もうだいぶ近づいてきて。



こんまま部屋入ったら、自分が何してまうか、正直自信ないわ……。



そう思っていた時。



「…ここで、大丈夫です」

と、ミニAちゃんに言われる。



僕は、無意識に、自分の自制心が試されずに済んだことに安心していて…

そんな自分に、少し笑ってまう。



よかった……。



それから僕たちは、さよならの挨拶をして。


僕はこの足で、そこの通りでタクシーでも拾って、恵比寿にでも繰り出そうかと思い。

ミニAちゃんが角曲がるのを見届けてから 歩き出し、スマホ取り出した瞬間。







「章ちゃん！」




振り返ると角の向こうから、ミニAちゃんが駆け寄ってくる。



「…ごめんなさい、さっき おうち、駅の反対方向って言ってたから…」

「……」


「歩いて帰るの、遠いのに、章ちゃん薄着だから、あのね、せめてマフラー…」



そう言って、そん時してたマフラーを、僕の首にかけてくれる。



ふわっと香る匂いは、香水とかやなくて…



「…ごめんね、私がさっきまでしてたやつなんて…いやかな…」



僕がされるがままに黙っていたら、ミニAちゃんが言うから。





僕は、僕の目の前でマフラーの先っちょ両手で掴んでうつむく子の頬を、




その頬を両手で包んで、




強引にキスをしたーーー

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