さらされる素顔【赤】 ページ5
「……お風呂、入る?」
「んー、腹いっぱいやから、お前 先入り」
私はひとり、廊下の奥の引き戸を開き、部屋付きの露天風呂へと向かう。
脱衣所で服を脱ぎながら、頭や顔を洗うべきなのかと悩む。
今まで数えきれないほど、彼の家に泊まって。
シャワーを借りたことは何度もあったけれど、化粧を落としたことは、殆どなかった。
でも今日は なんだか、それも違う気がして。
私は露天風呂の手前にあるシャワールームで、思い切って頭からお湯をかける。
メイクを落として、顔を洗って、きちんとしたアメニティが揃えられていたから、シャンプーもトリートメントも、いい香りがする。
身体を丁寧に、すみずみまで洗い、
私は、そのままの私になった。
シャワールームにこもった熱気を逃がすように 屋外へと続くドアを開けると、一気に冷気で身体が冷やされる。
私は慌てて髪を括りながら湯船に飛び込み、大きな息をついた。
溢れるお湯と、痺れてゆく指先。
さらさらとした泉質のそのお湯は 熱すぎない程度で、これならすぐにのぼせなくて済みそうだなと思う。
それでも、やはり、温かかった。
とても、静かな夜だった。
目の荒い すだれ越しに見える景色の下には、穏やかに流れる川があり、水面に、雪がただただ吸い込まれていく。
対岸の建物の屋根にはその雪がうずたかく積もっていて、音や光や温度や、人の暮らす気配も、すべてを閉じ込めているようだった。
しばらくの間 放心したような気持ちで 外を眺めながらつかっていると、
突然ガラガラと扉が開き、
彼が「さっぶ」と言いながら何も纏うことなく入ってくる。
すっかり油断していた私は、思わぬことに驚く。
彼と一緒にお風呂に入るなんて、何年ぶりのことだろう。
私の狼狽を知る由もない彼は、顔を見るなり、
「お前、眉毛なさすぎとちゃう」と言い放った。
「あれやろ、女子高生ん時、抜きすぎたパターンやろ」
そう揶揄いながら、ざぶざぶとお湯に入ってくる。
「ちょっと…身体流したの?」
「んー? ええやろ別に、部屋風呂やし」
そう言うと、ふあーっと気持ちのよさそうな声をあげ、一気に頭まで湯船の中に沈めてゆく。
お湯はざあざあと溢れかえり、彼は両手で顔から髪全体をなで上げながら、すぐに浮上してきた。
ひと息ついた、彼が私に言う。
「気持ちええな」
水に濡れたその人が、あまりにも美しすぎて。
私は、息の根が止まるかと思った。
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たまご(プロフ) - みかんさん» みかんさま、教えてくれてありがとうございます、探して数ページ読んでみましたがちょっと笑ってしまいました…。コメント欄閉じていらっしゃるので確信犯かな。。なんとも言えない気分です笑。 (2020年3月1日 20時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - くるみさん» くるみさん今更のお返事でごめんなさい、いつもありがとうございますー!また気が向いたらここも更新できたらいいな…(やるやる詐欺になりつつありますが)今後ともよろしくお願いします! (2020年3月1日 20時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
みかん(プロフ) - このお話大好きで繰り返し読ませて頂いてます。。スノのほうで白夜というお話があるのですがとてもこのお話に激似です。。確認してみてください。 (2020年2月28日 13時) (レス) id: 9f4ab94ec1 (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - またこの2人に会えて嬉しかったです!会えて、っておかしいか?笑 渋谷さんの不器用な優しさが沁みますね〜。またこんな感じで細々と続く2人をずっとずっと見守っていきたいです。寒い冬に暖かいエピソードありがとうございました! (2020年1月21日 1時) (レス) id: 64389dcac8 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - あくあさん» あくあさま、雪が降るといえばあくあさん、という感じだったのでコメントうれしいです。そうですね、彼らは何気ない日常のワンシーンを覗き見するみたいな感じで描きたかったので、そう感じてくださったなら本当に嬉しいです。ありがとうございます! (2020年1月20日 23時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たまご | 作成日時:2018年1月11日 0時