意外な名前【赤】 ページ11
「お前、急にいなくなるなや…」
彼が眠そうな顔をし、浴衣を軽く羽織りながら現れた。
「ごめん、目が覚めちゃって…」
「…ん」
そう言って、浴衣を脱衣所に放り投げ、彼もざぶん、とお風呂へと入ってくる。
二人して肩までお湯につかって。
並んで体育座りをしながら、朝焼けを眺める。
ーーー今はまだ、先のことを考えるのはやめよう。
横目で彼を見ると、なんだか拗ねたような顔をしているから、私は尋ねる。
「…起きて私がいなくて、不安だった？」
「…ん」
質問には答えずに、彼がそっと、私の頭を撫でてくる。
「ふふ」と私が笑うと、彼は「なん？」と聞いてくる。
「…さっき…起きた時ね、…もしかしたらもう… 魔法はとけちゃったかと思ってたから」
「…なん、魔法って」
「んー、すばるが私を甘やかしてくれる魔法」
「…あほやな」
ーーーまだ、もう少しだけ。
「…チェックアウトまでまだ時間あるしね、お風呂、何回も入りたいもんね」
「…せやで、せっかく温泉まで来たのに、浴衣の帯でこう、なんや目隠しとか…そーゆーの、まだやってへんし」
その冗談に乗り、私が小さく彼の耳元で「…あとで、しようね」と囁くと、
彼が耳まで赤くして目をそらすから、私はまた新しく、彼の一面を見つけた気がした。
……ここにきて、まだ知らない彼がいる。
きっと、まだまだ、たくさん、いる。
もうちょっと早く知りたかったな、なんて…
一瞬湧いてしまった気持ちにいったん蓋をして、
今度は私が彼の頭を撫でながら、「ありがとね」とお礼を言った。
「ありがとね」
「なにが」
「…うれしかった」
「なにが」
「…昨日のこと」
そう言うと、彼は「ああ」と言って、
少し、うつむいて。
「…お礼なら、ヤスに言え」
私に、意外な名前を告げた。
そして彼は、その日ヤスくんとしたという、
秘密の会話の内容を教えてくれる。
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たまご(プロフ) - みかんさん» みかんさま、教えてくれてありがとうございます、探して数ページ読んでみましたがちょっと笑ってしまいました…。コメント欄閉じていらっしゃるので確信犯かな。。なんとも言えない気分です笑。 (2020年3月1日 20時) (
レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - くるみさん» くるみさん今更のお返事でごめんなさい、いつもありがとうございますー！また気が向いたらここも更新できたらいいな…（やるやる詐欺になりつつありますが）今後ともよろしくお願いします！ (2020年3月1日 20時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
みかん(プロフ) - このお話大好きで繰り返し読ませて頂いてます。。スノのほうで白夜というお話があるのですがとてもこのお話に激似です。。確認してみてください。 (2020年2月28日 13時) (レス) id: 9f4ab94ec1 (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - またこの2人に会えて嬉しかったです！会えて、っておかしいか？笑 渋谷さんの不器用な優しさが沁みますね〜。またこんな感じで細々と続く2人をずっとずっと見守っていきたいです。寒い冬に暖かいエピソードありがとうございました！ (2020年1月21日 1時) (レス) id: 64389dcac8 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - あくあさん» あくあさま、雪が降るといえばあくあさん、という感じだったのでコメントうれしいです。そうですね、彼らは何気ない日常のワンシーンを覗き見するみたいな感じで描きたかったので、そう感じてくださったなら本当に嬉しいです。ありがとうございます！ (2020年1月20日 23時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たまご
| 作成日時：2018年1月11日 0時
