雪の車窓【赤】 ページ1
「車だしたろか」と言われたけれど、雪の降る道を彼に走らせるのは怖くて、断った。
新宿からひとり高速バスに乗る。
途中、数回の休憩でサービスエリアに立ち寄って。
久しぶりに来たそこに、私は妙にテンションが上がってしまって、ひとりでフランクフルトなんかを食べる。
白いコートにケチャップをこぼしそうになって慌てる。
見渡すと 家族連れやカップルばかりで、私は少しだけ恥ずかしくなった。
発車時刻が迫っていたから、急いでバスに戻ろうと走った時に、若者たちとすれ違う。
彼らは、あの頃の私たちみたいに、未来に不安も迷いもなさそうな顔で、はしゃぎ 笑っていた。
４時間の旅程は思いのほか長かったけれど、
スマホを見て過ごすのはもったいなくて、私は移り変わってゆく窓の外を見つめる。
気がついたら、いつの間にか眠っていて。
目を覚ました時、
そこはもう、雪景色だった。
真っ白い、世界。
雪って…こんなに、積もるんだ。
私はすぐに曇ってしまう車窓を服の袖で何度も拭きながら、じっと外を見つめる。
雪は、音もなく 降るのだということを想い出した。
落ち着いた 小さな旅館に着き、私の名前でチェックインすると、物腰の柔らかそうな仲居さんに部屋まで案内される。
「雪がすごくて いらっしゃるの、大変だったでしょう」
「いえ、大丈夫です。いつもこんなに降るんですか？」
「そんなこともないんですよ。たまたま一昨日から、降りっぱなしで」
そんな会話を交わしながら、廊下を進む。
部屋数は少なくて、しかも離れになっているから、ほっとした。
通された部屋は新しい畳の匂いがして気持ちがよかった。
私は仲居さんにお礼を言い、お茶をいれて、真ん中の座卓に置かれた椅子に座る。
少しして、部屋の外から、声をかけられる。
「お連れ様、お見えですよ」
マスクをした彼が、照れくさそうに入ってくる。
彼は仲居さんに会釈をして見送ると、私のほうを見て
「ええ部屋やな」と言った。
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たまご(プロフ) - みかんさん» みかんさま、教えてくれてありがとうございます、探して数ページ読んでみましたがちょっと笑ってしまいました…。コメント欄閉じていらっしゃるので確信犯かな。。なんとも言えない気分です笑。 (2020年3月1日 20時) (
レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - くるみさん» くるみさん今更のお返事でごめんなさい、いつもありがとうございますー！また気が向いたらここも更新できたらいいな…（やるやる詐欺になりつつありますが）今後ともよろしくお願いします！ (2020年3月1日 20時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
みかん(プロフ) - このお話大好きで繰り返し読ませて頂いてます。。スノのほうで白夜というお話があるのですがとてもこのお話に激似です。。確認してみてください。 (2020年2月28日 13時) (レス) id: 9f4ab94ec1 (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - またこの2人に会えて嬉しかったです！会えて、っておかしいか？笑 渋谷さんの不器用な優しさが沁みますね〜。またこんな感じで細々と続く2人をずっとずっと見守っていきたいです。寒い冬に暖かいエピソードありがとうございました！ (2020年1月21日 1時) (レス) id: 64389dcac8 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - あくあさん» あくあさま、雪が降るといえばあくあさん、という感じだったのでコメントうれしいです。そうですね、彼らは何気ない日常のワンシーンを覗き見するみたいな感じで描きたかったので、そう感じてくださったなら本当に嬉しいです。ありがとうございます！ (2020年1月20日 23時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たまご
| 作成日時：2018年1月11日 0時
