そして、雪が降る【赤と青】２

歪すぎる愛【Side青】 ページ37

僕はそこまで聞いて、飲みもんのおかわりを促す。

大将が直接 新しい酒持ってきてくれたから、ひと言ふた言交わし、

場の空気が、少し緩んだ。


そして僕は、長い間 抱えてきた疑問をぶつける。


「そない大事やのに…なんでちゃんと付き合おうとせんかったん？」


「……幸せに、して やれんやろ」


「どして？ Aちゃんはずっと渋やんのことが好きやってんし…渋やんやってそうなんやろ？」


「……結婚もしてやれんのに、今さら都合いいことは言えへんよ」


わかったようなこと言う渋やんに、僕はちょっとイラッとする。


「ええやん、いつかは結婚できるかもしれんし、俺らかてええ年なんやし、事務所やって…」


「できるか、そんなもん」


渋やんが強い口調で僕の言葉を塞ぐ。



「…みんな頑張っとる時やのに…ヨコもヒナも、マルも亮も大倉も……

…お前も。

グループみんな頑張っとる時に、

そんな水さすようなこと……できんわ」




僕はいつか大倉が言った、

“年上三人は 俺らにわからんこと、いろいろ考えてるんとちゃうかな”

という言葉を想い出す。



……こうして 僕たちは、

知らん間に 今までもずっとずっと、

守られてきたんか……。



「……やから、ちゃんと、手放してやるつもりやった」


渋やんが、続ける。



“自分で、幸せにできひんのなら”

“今さら彼女、なんていう肩書き与えて、もういい年のあいつを、しばったらあかんて思っとった”



“……あいつに、聞いたんや”


“別れる言うて来た日に、オトコ、できたんかって”

“そいつはお前んこと、幸せにしてくれるんかって”



“そーや、言うたら、別れるつもりやった”

“違うんやったら……”



“…どんな手使ってでも、引き止めてやろう、思った”



“いっそのこと永遠に……

閉じ込めてまいたいと思ったわ”




酒が進む。

灰皿はもう、山盛りになって、灰がこぼれ落ちていた。



歪すぎる、愛。



渋やんは、

Aちゃんも……

隠し通すことで、必死に守ろうとしてたんやな。



それを暴いてしまったんは……僕やった。




ーーそして僕は最後に、ひとつだけお願いをした。

それは、あの朝以来、ずっとずっと 考えていたことだった。

雪の花【Side青】→←不器用なふたり【Side青】

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す