国境を越える旅【橙】４ ページ4
「…Aさん、なかなか来いひんので…よう考えたらそっちから来づらいよな思てですね…」
「はい…」
「…それであの、迎えに、いったほうがええのかなと…」
カーテンからメガネをかけた顔だけ出して、彼は遠慮がちに言う、その声はエンジン音が低く鳴り続ける機内に優しく吸収されていく。
「…実は今、ちょうどそちらに行っていいか悩んでいたとこでした」
「ほんまですの？ Good Timingですやん」
…「シャイニング」のジャックニコルソンみたいな体勢のまま。
発音の良さを強調するみたいにしてふざけて言うから私が笑うと、彼はようやく全身を現し、そっとカーテンを閉めた。
「あー、ずーっと英語ばっかやったんで、安心するわ〜」
「私は日本人の友達と一緒にいたんであれですけど…完全にお一人だったんですか？」
それから私たちはしばらくそこで立ち話をする、あそこは行ったかとか、あのハンバーガーは食べたかとか。
「昔も一回自分探しゆう名目でスペイン行ったんですけどね、どこに行っても自分は自分やなあて痛感しただけやったんですけど」
「今回は？」
「見ての通り、一回り大きくなりましたわ！ ばーん！」
お腹を突き出して叩く
ほんとに、このひとはサービス精神旺盛なひとで
スタッフみんなにも愛されていて
そのサービスを、今…
ひとりじめ…していた。
……
飛行機は太平洋の上を飛ぶ
私たちは小さな窓を二人で覗き込む
丸山さんからは…少しだけお酒の匂いがした。
…きっと、私からも。
ちらりと左手のエコノミーエリアに目をやると、皆一様に寝静まっているから安心してーー…
「…こないゆっくりAさんと話せるとは思ってなかったですわ」
窓から顔を離し真っすぐに立った彼の声が、右後ろから聴こえてくる。
「…そうですね、舞台中はそれどころじゃなかったですし」
まるで自分の思考を見透かされたかのような言葉に…
私はなんだか気恥ずかしくなり、窓の外を見つめたまま答える。
「いっぺん終演後に帰るとこお見かけしたんですけどね、声かけようか悩んだんですけど…周りにあいつナンパしとるわ思われそうで…」
「そうだったんですか？ 誰もそんなこと思わないーー」
「ーー…せやから」
「…？」
制するように、重ねられた言葉に振り向くと
「…せやから、今回は頑張ってナンパ、してみました」
ーーそう言って彼は、恥ずかしそうに笑った
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たまご(プロフ) - くりくりさん» くりくり様、お返事遅くなってごめんなさい！コメントありがとうございました！ラスト駆け足になってしまいましたが、少しでも気に入っていただけたなら幸せです。今後ともよろしくお願いします！ (2019年9月5日 4時) (
レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - まっきーさん» まっきー様、いつもありがとうございます！緑さんのお話、書いた当初は自信なかったんですが、今では結構好きなお話です。7人揃う日まで気長にお付き合い頂けると嬉しいです…！ (2019年9月5日 4時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
くりくり(プロフ) - 初恋ごっこ、読み終えて胸が苦しくて愛おしい気持ちが溢れて一言お伝えせずにいられなくなりました。更新が待ち遠しいです！ (2019年8月25日 15時) (レス) id: f2b0afbb33 (このIDを非表示/違反報告)
まっきー(プロフ) - どのお話も素敵でした！とくに大倉君のお話が堪らなく好きです(*´∇｀*)最高です！！お忙しいとは思いますが、更新楽しみに待っています！！ (2019年8月15日 20時) (レス) id: 76f56a80a0 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ひよりんさん» ひよりんさん！コメントありがとうございます、まさかひよりんさんに読んでいただける&コメントまでいただけるとは思わず二度見しました…！うれしいですありがとうございます、今後とも何卒よろしくお願いします…｡ﾟ(ﾟ´ω`ﾟ)ﾟ｡ (2019年8月15日 16時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たまご
| 作成日時：2018年4月30日 14時
