隣の飼い猫【緑】３ ページ21
あれは確かTシャツの季節だったから…
きっと、まだ夏の終わりのことだった。
いつも玄関口ギリギリまで私を出迎えに来るヨルが、マンションの廊下へ飛び出した夜…
扉が閉まる直前、私は誤ってコンビニの袋を落としてしまい、それに驚いた彼女が跳ね上がった。
甘やかされた部屋猫は咄嗟に飛び出した先…その廊下の慣れない光景にパニックを起こし駆け出す。
「…待って！ ヨル！」
焦って追いかける私と、方向感覚を失ったように走り続けるヨル。
「…うわっ！ なにーー…」
彼がギイイと開けた扉の前、彼女はその場に居竦んで黒い塊となり。
「…捕まえりゃええんすよね？」
念のため、といった感じで確認してくる彼と、何度も頷く私
…二人して悪戦苦闘の捕物帳が始まった。
……
「…本当にご迷惑をおかけしました」
彼の腕から、ようやく抵抗をやめたヨルを受け取る
黒く光る毛を、落ち着かせるように撫でながら
「…あ」
Tシャツから伸びる腕に引っ掻き傷、どうしようこんなーー…
「あー、消毒しとくんで気にせんでええですよ。…まあファンの子に『どこの女に引っ掻かれたんやー』言うて邪推されるかもしれんけど、ははは」
…そう言って顔全体で笑うこの人が…どういう人なのか。
それくらい世間知らずの私でさえ知っていた。
慌てて消毒液と絆創膏を渡して、
それ、以来。
……
「こんばんは」
「…おう、ヨルちゃん元気ー？」
生活時間帯が近いらしい私たちは、顔を合わせると挨拶をするようになり。
「…会ってきます？ ヨル」
「お、ええの？」
「…今なら、少しくらいでしたら」
…たまに、うちに顔を出すようになり。
「あ、よかったら ご飯…余っちゃってて」
「…さっきから ええ匂いしとるなー思っとったわぁ」
醤油の貸し借りこそ、したことはなかったけれど。
「そこのコンビニ閉店したん？」
「うん、あとでアパート建つみたい」
「えー、通りの向こうまで行かなあかんやん」
半袖からパーカーになり、ニットに変わっていくまでの間、
…私たちは、よき隣人として。
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たまご(プロフ) - くりくりさん» くりくり様、お返事遅くなってごめんなさい！コメントありがとうございました！ラスト駆け足になってしまいましたが、少しでも気に入っていただけたなら幸せです。今後ともよろしくお願いします！ (2019年9月5日 4時) (
レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - まっきーさん» まっきー様、いつもありがとうございます！緑さんのお話、書いた当初は自信なかったんですが、今では結構好きなお話です。7人揃う日まで気長にお付き合い頂けると嬉しいです…！ (2019年9月5日 4時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
くりくり(プロフ) - 初恋ごっこ、読み終えて胸が苦しくて愛おしい気持ちが溢れて一言お伝えせずにいられなくなりました。更新が待ち遠しいです！ (2019年8月25日 15時) (レス) id: f2b0afbb33 (このIDを非表示/違反報告)
まっきー(プロフ) - どのお話も素敵でした！とくに大倉君のお話が堪らなく好きです(*´∇｀*)最高です！！お忙しいとは思いますが、更新楽しみに待っています！！ (2019年8月15日 20時) (レス) id: 76f56a80a0 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ひよりんさん» ひよりんさん！コメントありがとうございます、まさかひよりんさんに読んでいただける&コメントまでいただけるとは思わず二度見しました…！うれしいですありがとうございます、今後とも何卒よろしくお願いします…｡ﾟ(ﾟ´ω`ﾟ)ﾟ｡ (2019年8月15日 16時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たまご
| 作成日時：2018年4月30日 14時
