ドラえもんの夜【紫】２ ページ11
「…いらっしゃいませ。お独りですか？」
「…電話もせんとすんませんね、空いてはります？」
月曜深夜１時過ぎ、お店はがらがらで、時間を持て余した私が 氷を丸く作ることにひどく熱心になっていた頃。
傘をささずに歩いてきたようで、彼の肩には水滴が光っていた。
…その個室はバーカウンター前に２席と、詰めれば３人ずつ掛けることのできるソファが２脚置かれていて。
「ええんすか、独り占めして」
「もちろん。チャージ料は定額いただきますが」
目の前、カウンター席に腰を掛けた彼があまりにいつもと違う雰囲気だったから…冗談まじりにそんな言葉をかけたら、疲れた顔で静かに笑った。
「ハーパーの水割り」
「かしこまりました」
「…あ。やなくて、濃いやつで」
習慣のように薄めに作ろうとする私の手元を見て、彼はそう付け加えて。
…茶色い液体をいつもの倍グラスに注ぎ、水を加えマドラーで静かに混ぜる。
「…お待たせしました」
「おん。…ありがとう」
…店内にはBill Evansの「My Foolish Heart」が流れていた。
甘いピアノ、いつもの彼だったらきっと音楽が流れていることにすら気づいていないだろうに、今はじっとその囁かな音色に聴き入っている。
「…私、あちらにいましょうか？」
「…ああ…うん…いや、おってもらったほうがええわ」
こんなふうに歯切れが悪い夜が。
この人にも、何かを考えて独りで自分のためにお酒を飲みたい夜が、あるんだということに。
静かに驚きながらも、そんな日にこの店を選んでくれたことが、少しだけ誇らしかった。
「…なんか、話してくれへんかな」
「…どんなお話がいいですか？」
「…なんでもええよ」
少しだけ、考えてから。
「…じゃあ、ドラえもんの話を」
「はは、なんやそれ」
きっと頭を使いたいわけではないのだろうから。
曖昧に相づちを打って、受け流しても問題のない話を。
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たまご(プロフ) - くりくりさん» くりくり様、お返事遅くなってごめんなさい！コメントありがとうございました！ラスト駆け足になってしまいましたが、少しでも気に入っていただけたなら幸せです。今後ともよろしくお願いします！ (2019年9月5日 4時) (
レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - まっきーさん» まっきー様、いつもありがとうございます！緑さんのお話、書いた当初は自信なかったんですが、今では結構好きなお話です。7人揃う日まで気長にお付き合い頂けると嬉しいです…！ (2019年9月5日 4時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
くりくり(プロフ) - 初恋ごっこ、読み終えて胸が苦しくて愛おしい気持ちが溢れて一言お伝えせずにいられなくなりました。更新が待ち遠しいです！ (2019年8月25日 15時) (レス) id: f2b0afbb33 (このIDを非表示/違反報告)
まっきー(プロフ) - どのお話も素敵でした！とくに大倉君のお話が堪らなく好きです(*´∇｀*)最高です！！お忙しいとは思いますが、更新楽しみに待っています！！ (2019年8月15日 20時) (レス) id: 76f56a80a0 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ひよりんさん» ひよりんさん！コメントありがとうございます、まさかひよりんさんに読んでいただける&コメントまでいただけるとは思わず二度見しました…！うれしいですありがとうございます、今後とも何卒よろしくお願いします…｡ﾟ(ﾟ´ω`ﾟ)ﾟ｡ (2019年8月15日 16時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たまご
| 作成日時：2018年4月30日 14時
