初恋ごっこ【橙】５ ページ32
「あー楽しかったなあ！」
私は一体、何を期待して来たのだろうーー…
22時半、赤い顔をしたみんなはその場で伸びをしながらお会計を終え、
「この後どないする？ マルは？」
「あ、僕明日早いから遠慮しとくわ、ごめんなあ」
「せなんや、Aちゃんは？ もう一杯付き合わへん？」
「…いや、ごめんね、私も今日はやめとく」
…ミエちゃんは、いやみんな優しくて残念がってくれる
疎外感を感じるのはすべて私の問題で
そう、
私は一体、何を期待して、
何にがっかりしているのだろうーー…
「…じゃあ、今日は呼んでくれてありがとう」
ホテルのエントランス、歩いて帰るからと私は彼らと別れる
「ん、仕事でもお世話になるからね、また近々やんな」
ミエちゃんはそう言って笑い
「Aさん、気ぃつけてなー！ また！」
私はお辞儀をして、手を振るみんなに背を向け歩き出すーー…
梅雨の合間 天気のいい日だった
夏の夜の東京、晴海通りの風は涼しくーー…
…転校ばかり繰り返していた私に、貴重な幼馴染みができたじゃないか
…みんなそれぞれの場所で頑張っていて、すごく刺激になったし
絶え間なく流れてゆくタクシーのテールランプ
俯きながら、普段より高いヒールをこつこつと鳴らしながら歩く
踵が痛む
…たとえ忘れられていたとしても
彼もちゃんと元気そうなことがわかって
うん、わざわざ来てよかった
言い聞かせるように顔を上げた時ーー…
「ーー…Aさん！」
ーー…
「…どうしたの…？」
…走って、追ってきてくれたんだろうかーー…
私は目を見張る
３m手前
腰を折り曲げ膝に手をあてて、ぜえぜえとあがる息ーー…
「いやっ あの…忘れてて」
変装用かな、かけた眼鏡が少しずり落ちていて
「あ…ごめんなさい私、忘れ物した？」
「いやっ…、」
彼の後ろには、さっきまで私たちが居た煌びやかなホテルがそびえ立っていたーー…
「…ちゃうねん、僕、Aさんのこと忘れてて、ほんま失礼やったなって…、」
「え、そんな、無理ないし、気にしないで…」
わざわざ謝るためにーー…？
「やからっ…、」
「ーー…」
真っすぐに立ち上がり彼はこちらを向いたまま背後、上空を指差す
その先には星空ーー…
「…やから、あっこでもう一杯だけ、お詫びに奢らせてくれへん？」
24階建ての24階
天に一番近いバーで
思いも寄らぬ二次会が始まるーー…
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 933人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「関ジャニ∞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
たまご(プロフ) - くりくりさん» くりくり様、お返事遅くなってごめんなさい！コメントありがとうございました！ラスト駆け足になってしまいましたが、少しでも気に入っていただけたなら幸せです。今後ともよろしくお願いします！ (2019年9月5日 4時) (
レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - まっきーさん» まっきー様、いつもありがとうございます！緑さんのお話、書いた当初は自信なかったんですが、今では結構好きなお話です。7人揃う日まで気長にお付き合い頂けると嬉しいです…！ (2019年9月5日 4時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
くりくり(プロフ) - 初恋ごっこ、読み終えて胸が苦しくて愛おしい気持ちが溢れて一言お伝えせずにいられなくなりました。更新が待ち遠しいです！ (2019年8月25日 15時) (レス) id: f2b0afbb33 (このIDを非表示/違反報告)
まっきー(プロフ) - どのお話も素敵でした！とくに大倉君のお話が堪らなく好きです(*´∇｀*)最高です！！お忙しいとは思いますが、更新楽しみに待っています！！ (2019年8月15日 20時) (レス) id: 76f56a80a0 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ひよりんさん» ひよりんさん！コメントありがとうございます、まさかひよりんさんに読んでいただける&コメントまでいただけるとは思わず二度見しました…！うれしいですありがとうございます、今後とも何卒よろしくお願いします…｡ﾟ(ﾟ´ω`ﾟ)ﾟ｡ (2019年8月15日 16時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：たまご
| 作成日時：2018年4月30日 14時
