左腿の記憶【黄】 ページ3
「ほな、なんかあったらすぐ連絡してな」
そう言って私の頭をぽんと叩き、15分ほどで 忠義は会計を済ませ帰っていった。
…忙しいのに。
たったこれだけを、伝えるために。
優しい友人のその心遣いに改めて感謝をしながら、私は早足で駅へと消えていく彼の姿を窓から見つめる。
テーブルを見ると、カップには、まだ少しコーヒーが残っていた。
「お願いします」
上の空のままそれをカウンター奥の厨房へと運ぶと、バイトくんに声をかけられる。
「…お知り合いっすか？」
「うん、大学の時の友達。…あ、錦戸くん、就活 メーカー志望じゃなかったっけ。彼、メーカーの営業だから、もしあれだったら紹介しようか？」
「…ああ…いや、大丈夫っす。すんません気ぃ遣わせて」
伏し目がちに答える彼。
…出しゃばらないし、物覚えは早いし気が利くし。
大学生とは思えない、しっかりした子…
こんな時給千円足らずのお店で働かなくても、いくらでも割のいいバイトがありそうなものなのに。
「 …まあ錦戸くんに抜けられると新しい子探すの大変だろうなあ。ほんと優秀だもんね」
「…そもそもこん店、Aさん一人でも回せる気もしますけどね」
カップを手早く洗いながら、がらんとした客席を見やって彼は笑った。
「…私、ちょっと火が苦手だから、厨房できなくて」
「…そう、なんすね。あ、休憩入ってもらって大丈夫っすよ、俺ひとりで見とくんで」
…こういう時、立ち入ったことを聞かないのも 彼の賢いところだった。
店内の時計に目をやると、もう16時すぎ…
夕方になるとまたお客さんが増えるから、確かに休憩をもらうなら今のうちだな。
「俺、なんかまかない作りましょうか？」
「…ううん、ちょっと外でてくるから大丈夫。あ、あのおじいちゃんだけ、息子さんが迎えにいらっしゃるまでどっか行っちゃわないように、よろしくね」
そう言い残して、私はお店を出る。
寒さに身構えてドアを開けると…外は拍子抜けするほどに暖かく、春の気配がした。
吹く風がぬるく私の頬をすり抜けていく。
私はパン屋さんで、適当なパンと飲み物を買い。
近所にある、人のいない小さな公園のベンチに座る。
…桜が咲くと、この公園もお花見客でいっぱいになる。
袋から取り出したパンを齧ろうとして…私はそのまま膝の上にそれをおろし、
左腿をさする。
……ヤスくん。
彼と最後に会ったのは、４年前…
ちょうどこんな季節のことだった。
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たまご(プロフ) - zika..さん» zika..様、コメントありがとうございます嬉しいです^ ^ 私もこの黄色さんやたら好きなので多分今後色々活躍してくれると思います…引き続き楽しんで頂けますように！ (2018年4月1日 20時) (
レス) id: 42d81ca1be (このIDを非表示/違反報告)
zika..(プロフ) - 初コメ失礼します ！ 錦戸くんの通話時間12秒 、何だかすごく好きでソコだけ何回も読み直してしまいました … 。これからも応援してます 、頑張って下さい ！ (2018年3月31日 19時) (レス) id: dc0484f61f (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - べにさん» べに様、わざわざお返事ありがとうございます！本当にうれしいです…Twitterのほうでも仲良くしていただけるとうれしいです^ ^ (2018年3月31日 16時) (レス) id: 42d81ca1be (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - yuuka_madreさん» yuuka_madre様、コメントありがとうございます！お返事遅くなってごめんなさい…！ここからはあまり書いたことのないメンバーがたくさん登場するので、いろいろ不安ですが、引き続きお楽しみいただけるとうれしいです！ (2018年3月31日 16時) (レス) id: 42d81ca1be (このIDを非表示/違反報告)
べに(プロフ) - たまごさん» お返事ありがとうございます…！Twitter！すみません！そちらのほうもこっそりと…ストーカーみたいで申し訳ないです苦笑 フォロバしてくださったみたいで(T T)うれしいです、よろしくお願いします(T T) (2018年3月30日 8時) (レス) id: c68c31e30a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たまご
| 作成日時：2018年3月15日 22時
