開かれたドア【ヒヨリ】 ページ8
「では、失礼します。風邪ひかれないようお気をつけてくださいね」
なんでもなかった顔をして、そう挨拶して、私は頭を下げる
「ん…ほんまにありがとうね」
彼はまた申し訳なさそうにお礼を言って玄関へと足を踏み入れる、
中の電気が自動で灯る
私はそれを見届け、
自分の居場所へと戻るべく踵を返して足早に元来た道を戻る
背中で かちゃんと、
静かに扉が閉ざされる音がする
視線を上げると廊下の端、窓から32階の夜景がきらきらと飛び込んでくる
その特別な美しさに、
私はなぜか泣きそうになるーー…
がちゃり
「ーー…あ、横山さん！」
「…はい？」
「…はっ、ややこしなほんまに…」
振り返ると、3メートル先…
また開かれたドアの隙間から、彼が顔を出して笑っていた。
「…横山さん、下の名前はなんて言うん？」
「…ヒヨリ、です」
「…これ、なんかでもらってずっと玄関とこに置いとったんやけど、ツリーにでも飾って」
「え…？」
顔だけドアから出したまま、彼はぽーんと、私に何かを投げるーー…
「メリークリスマス、ヒヨリちゃん」
「ーー…」
…私の両手の中に綺麗にすぽっと収まったそれは、
クリスマスツリーには全く似つかわしくない、
「Hawaii」と刻印の入った椰子の木のキーホルダーだった。
「ーー…」
…そもそも、クリスマスにはまだ１か月あるし
もみの木と椰子の木の食い合わせはあまりにも最悪だし
普段絶対こんなことしなそうな人なのに…
ああ見えて彼は実は、相当酔っていたのではないかと
…そのまま、ばたんと閉じた彼の部屋のドアを見つめながら
“ヒヨリちゃん”
「ーー…」
…私は、“横山”と言う苗字に生まれてきたことに、その時初めて感謝をした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 511人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ジャニーズ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆき姉(プロフ) - 年末年始と忙しくて気になっていたけど我慢してやっと、読めました！あここで名前が？って予想外だったので戸惑った笑ほんまのほんま、の感想は完結した時に。でもでもだけど。やっぱりたまごさんのかくeightが好きです。 (2021年1月7日 18時) (
レス) id: f0721a3442 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - はるさん» はるさん、コメントありがとうございます、とても嬉しいです。ちょうど「CHANCE」が出たころっぽかったのでそのイメージでしたが、マドモアゼルココもいいですね！引き続き見守っていただけると嬉しいです。 (2020年12月17日 3時) (レス) id: 0669d21b3c (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - 鳥肉なし、愛がたっぷりのオムライスがリアルっぽくて切な愛おしいです。シャネルの香水はマドモアゼルココが大好きなので、それをイメージしました。 (2020年12月15日 11時) (レス) id: c38ac67a9b (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - kukuさん» kukuさんコメントありがとうございます、嬉しいです！ほんと励まされます…！どうか引き続き楽しんでいただけますように！ (2020年12月7日 22時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ぽてとさん» お返事ありがとうございました！ようやくご自身のお名前出てきたと思うので、どうか引き続きお楽しみいただけますように…！ (2020年12月7日 22時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：たまご
| 作成日時：2020年12月4日 16時
