15年前の俺【黒】 ページ46
「ーー…」
…もう、何杯飲んだやろうか
そこまで話して
俺は ふぅー、と、息を吐いた。
…あのあと、俺はしばらくまだ混乱しとって
ぐっさんの世話になりながら数日を過ごし
彼女とちゃんと話そうと心を決めた時には、
もう全てが終わっていた。
それから、連絡の取れなくなった彼女を俺はずっと探していたけれど
“…嘘だったんだよ”
…あんな嘘をついた彼女を、
俺の決意を勝手に無効にした彼女を
どこかで完全に許せたわけではなかった俺は。
…結局 彼女も俺との関係に限界感じてたということなんやろなと
半ば、諦めていたんやった。
“俺が守ったる”
“俺がなんとかせな”
…今思えば
ひとりで空回った15年前の俺は、ただそんなヒロイズムに酔っていただけで
ほんまに、彼女をちゃんと愛せていたんやろうかーー…
ワインの回った頭でゆらりと考える
「ーー…」
…啜り泣きに気付いたんは、そん時やった。
ーー…
「…ごめんなさい」
「…はは、なんでヒヨリちゃんが泣くん…」
「……」
「…ほら、もう15年前の話やで」
…そう、もう15年も経った
“昔のお前、みたいだな”
“…それは言わんどいてよお”
…何年か前、ぐっさんと笑いながらそんな話をしたなあと思い出す
ようやく、ネタにできるくらいになったやんーー…
「…私には、わからないです」
「…うん」
「…わかったなんて、とても言えないです」
「…うん」
「…でもきっと、必死だったんだろうなって」
「ーー…」
「…一生懸命だったのにって、横山さんも、Aさんも、マネージャーさんも」
「……」
「…だから、苦しいです」
…ヒヨリちゃんはそれだけ言うて、ぐっと涙を飲み込んで
グラスに残っていたワインを飲み干した
“ごめんなさい、私なんかが泣いてしまって”
…堪えるように目をぱちぱちさせながら、天井を見る…
…俺は、たまらんくて。
誰かの悲しみや体験を、自分のもんとして消費することを自分に許さないこの子の高潔さが。
…それから、
“一生懸命でいいなって思ってた”
…Aが最初に俺に言うてくれた言葉
“必死だったんだろうなって”
“一生懸命だったのにって”
…今そう言われて
あん時の俺が、少しだけ、報われたような気がしたんやーー…
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ゆき姉(プロフ) - 年末年始と忙しくて気になっていたけど我慢してやっと、読めました！あここで名前が？って予想外だったので戸惑った笑ほんまのほんま、の感想は完結した時に。でもでもだけど。やっぱりたまごさんのかくeightが好きです。 (2021年1月7日 18時) (
レス) id: f0721a3442 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - はるさん» はるさん、コメントありがとうございます、とても嬉しいです。ちょうど「CHANCE」が出たころっぽかったのでそのイメージでしたが、マドモアゼルココもいいですね！引き続き見守っていただけると嬉しいです。 (2020年12月17日 3時) (レス) id: 0669d21b3c (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - 鳥肉なし、愛がたっぷりのオムライスがリアルっぽくて切な愛おしいです。シャネルの香水はマドモアゼルココが大好きなので、それをイメージしました。 (2020年12月15日 11時) (レス) id: c38ac67a9b (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - kukuさん» kukuさんコメントありがとうございます、嬉しいです！ほんと励まされます…！どうか引き続き楽しんでいただけますように！ (2020年12月7日 22時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ぽてとさん» お返事ありがとうございました！ようやくご自身のお名前出てきたと思うので、どうか引き続きお楽しみいただけますように…！ (2020年12月7日 22時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たまご
| 作成日時：2020年12月4日 16時
