戦友の声【黒】 ページ5
「ヨコ、新番組決まったわ」
「え、ほんまに？ 5人の？」
「うん。冠。このタイミングでオファーかけてくれた意味わかるよな？」
…1か月くらい前、珍しくチーフマネージャーのぐっさんが飯行こういうから、
ついてった先の個室の焼き鳥屋でそう言われた。
…意味。
うん、まあ、色々。
事務所も…俺らもこの数年色々あって
各所に迷惑かけまくっとったのは事実やったから。
局と事務所が長い年月かけて築いてきた関係性と、広げてきた枠
…そん中で、もうええ年の俺らにわざわざ声かけてくれるんは、グループだけやなく事務所全体の信頼を背負ういうことでもあった。
「…後輩たちのためでもあるんよなあ」
「まあな。ぶっちゃけスケジュールきついから断る手もあったんだけど」
「や…ありがたいしもちろんやるわ。結果残さんとなあ…」
空いた赤ワインのグラス、自分でどぼどぼと注ぎながら、俺はグラスのフチ見て呟く。
与えられた仕事を断るいう選択肢は、昔も今も自分の中にはなかった。
「…もうみんな知っとるん？」
「村上のスケジュールが一番エグいからあいつにだけ先に言った。とりあえず企画書読んどいて」
「ん…踏ん張り時やしな」
「…お前らはずっと踏ん張り時だけどな」
でかでかと頭に“関ジャニ∞の夢応援します(仮)”と書かれた、ペラ5枚くらいの企画書渡しながらそう言って笑う。
…デビュー当時からずっと一緒にやってきたこの皮肉屋のおっさんを、
かつては強大な敵のように感じとったこともあるけど。
「…お前には苦労かけるよ」
「思ってへんやろそんなこと」
とってつけたようなその一言に俺は呆れながら突っ込む。
「や、ほんとに。…頼りにしてるわ」
「…ん」
…その声は、掠れたように小さくて、やけど確かな強さを持って俺に響き
いつの間にか戦友みたいになっとったこん人もほんまに大変やったろうなと俺はそん時しみじみ思うて
さっき自分に注いだボトル、向こう側に傾けたら空やったから、俺たちはまた笑った。
それから1か月後、今日がその新番組の初打ち合わせの日で
事務所の一室で俺はスタッフたちと顔を合わせる。
「失礼しまーす」
挨拶を交わす、ずいぶん前に仕事したことある総合演出とディレクター、
プロデューサーだけ、初めての人やった。
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ゆき姉(プロフ) - 年末年始と忙しくて気になっていたけど我慢してやっと、読めました！あここで名前が？って予想外だったので戸惑った笑ほんまのほんま、の感想は完結した時に。でもでもだけど。やっぱりたまごさんのかくeightが好きです。 (2021年1月7日 18時) (
レス) id: f0721a3442 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - はるさん» はるさん、コメントありがとうございます、とても嬉しいです。ちょうど「CHANCE」が出たころっぽかったのでそのイメージでしたが、マドモアゼルココもいいですね！引き続き見守っていただけると嬉しいです。 (2020年12月17日 3時) (レス) id: 0669d21b3c (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - 鳥肉なし、愛がたっぷりのオムライスがリアルっぽくて切な愛おしいです。シャネルの香水はマドモアゼルココが大好きなので、それをイメージしました。 (2020年12月15日 11時) (レス) id: c38ac67a9b (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - kukuさん» kukuさんコメントありがとうございます、嬉しいです！ほんと励まされます…！どうか引き続き楽しんでいただけますように！ (2020年12月7日 22時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ぽてとさん» お返事ありがとうございました！ようやくご自身のお名前出てきたと思うので、どうか引き続きお楽しみいただけますように…！ (2020年12月7日 22時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たまご
| 作成日時：2020年12月4日 16時
