呼び出しの理由【黒】 ページ22
…馴染みの店に入って
いつも使う、奥の個室に通してもらって
後から女の子が来るはずやから通してくれと頼む
この店のオーナーは若い頃からの知り合いやから、
いろんな意味で信頼していた。
…あの子、飯食うたんやろか
わからんから、とりあえずボトルワインとつまみを適当に頼む
「ーー…」
15分待っても現れんから、不安になった頃に、個室の扉が開いた。
「…申し訳ありません、お待たせして」
「いや、ごめん、迷った？ こん店入り口わかりづらいよな、看板出てへんし」
「いえ…大丈夫です」
彼女は首にぐるぐる巻いとったマフラーを解いて隣ん席に置きながら、
俺の向かいにそっと腰掛けた。
「…こんなお店あったんですね」
「ん、ええ店よ、使うたら？ マンションからも近いし」
「いえ、私にはハードルが高いです」
そう言って困ったように笑う
…そうか、
俺んとっては当たり前の世界やけど、
まだ若いこの子にとっては、ずいぶん不慣れな場所に呼んでまったんやなとようやく気づく。
「あ…何飲む？ 俺最初っからワインにしてもうたけど、ビールとかもあるし」
「いや、お酒は…烏龍茶とかでもいいですか」
「烏龍茶はどないやろ…あったかな…」
そういうと彼女は“ごめんなさい、なんでもいいです”言うから、俺はとりあえずブラッドオレンジジュースを頼んだ。
「ーー…」
「…あ、腹減っとる？ ここ飯もうまいで」
…なんて、
沈黙が怖くて俺はなんとかその隙間を埋めるのに必死やのに、彼女はそれを固辞する。
…運ばれたオレンジジュース飲んで彼女が小さく“おいしい”と呟いたから、
ようやく、ほんの少しだけ安心した。
「…あの」
両手でグラス握っとった彼女が、顔を上げて先制攻撃のように口を開いた。
「…あの、先日のことでしたら、当然私は誰にも何も言いませんので」
「ーー…」
「…こんなふうに私のことまでお気遣いいただかなくて大丈夫ですよ」
…彼女はそう言って少し笑って
ああ、そうか
「…いや」
「ーー…」
「…ちゃうねん」
違うねんーー…
「…ちょっと、頼みたいことがあって」
「…頼みたいこと？」
「ん…こんなこと、ヒヨリちゃんにしか頼まれへんねんけど…」
俺は
一週間悩んで悩んで
よりにもよって、今一番気になっとる女の子にーー…
「…あいつに、渡してほしいもんがあって」
…こんなことを頼むために、呼び出したんやった。
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ゆき姉(プロフ) - 年末年始と忙しくて気になっていたけど我慢してやっと、読めました！あここで名前が？って予想外だったので戸惑った笑ほんまのほんま、の感想は完結した時に。でもでもだけど。やっぱりたまごさんのかくeightが好きです。 (2021年1月7日 18時) (
レス) id: f0721a3442 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - はるさん» はるさん、コメントありがとうございます、とても嬉しいです。ちょうど「CHANCE」が出たころっぽかったのでそのイメージでしたが、マドモアゼルココもいいですね！引き続き見守っていただけると嬉しいです。 (2020年12月17日 3時) (レス) id: 0669d21b3c (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - 鳥肉なし、愛がたっぷりのオムライスがリアルっぽくて切な愛おしいです。シャネルの香水はマドモアゼルココが大好きなので、それをイメージしました。 (2020年12月15日 11時) (レス) id: c38ac67a9b (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - kukuさん» kukuさんコメントありがとうございます、嬉しいです！ほんと励まされます…！どうか引き続き楽しんでいただけますように！ (2020年12月7日 22時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ぽてとさん» お返事ありがとうございました！ようやくご自身のお名前出てきたと思うので、どうか引き続きお楽しみいただけますように…！ (2020年12月7日 22時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たまご
| 作成日時：2020年12月4日 16時
