・ ページ14
いつものハニーラテを買って、これだけ持って？って、私にその袋を持たせて。
二人で歩くいつもの道。
繋いだ手をブンブンふって歩いた。
「Aちゃん、ご機嫌やねぇ？笑」
『ふふーっ、飲み過ぎちゃったっ。』
「だいじょぶ？」
『うーん、おんぶ？』
「いやいや、頑張って歩こなぁ？笑」
『けちーっ』
甘えたくて絡みたくて。
わざとクダをまく私を優しく諭しながら歩く章大さんの姿。
右手に私のスーツケース、左手には私の手。
リードするように、二歩前を歩く広い背中。
節ばった指を私の指にがっちり絡めて、離れないように握る手。
そのどれもが愛しくて、なくしたくなくて。
章大さんの後ろ姿を見ていたら、お酒も手伝ってか、涙が込み上げてきて。気付かれないように、小さく鼻を啜った。
「ちょお寄り道してこか？」
章大さんは突然公園に入り、ずんずん進み。
ブランコに私を座らせた。
「ほれ、冷めないうち飲もっ」
ってラテを渡してくれて、隣のブランコに座った。
『懐かしーっ』
キィと漕ぎ始めた私に、
「酒回るでー？」
また、呆れた笑いを見せた。
『だいじょぶっ、そーっとやるっ』
キィっと軋むブランコの音。両足を揃えてブンと振ると、どんどんついていく勢い、増していく高さ。
こんな風に思いきって振り切れちゃえば、きっとどこまでも高く、遠くまで行けるのに。
勢いが増すほど大きくなるブランコの軋む音が懐かしさを誘って、少しの切なさを覚えるように、
振り切って進もうとする時に限って痛感する、大きすぎる安心感、心地よさ。
この数年間、毎日の積み重ねで得た宝物は大きすぎるものだった。
「A、アカンよー」
章大さんが立ち上がって、心配そうに声をかけた。
「Aー、」
視界の端で規則的に現れては消える章大さんが、段々滲んで見えてきた。
「マジで危ないってっ、」
大きな音を立てて、ガクンと大きく揺れたブランコ。
鎖に絡めた右手に持っていた紙カップの飲み口から、ポチョンと、温くなったラテが顔を出した。
『うっ…、ふっ……、うう…っ』
涙が溢れて止まらなかった。
そんな私を後ろからそっと抱きしめて、
「怪我しとらん？」
「ヤケドせんかった？」
って、優しく響く章大さんの声。
声にならなくて、首を振るしかできなかった。
その時。
「…A、決めたんやな。」
「東京…。信ちゃんとこ、いくんやろ？」
大好きな声が、胸の奥にズシン、と、響いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1264人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「関ジャニ∞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
がくたん(プロフ) - あきさん» 初めまして！コメントありがとうございます！上田さんのナースとしての姿勢、そんな風に言っていただけて嬉しいです。介護士さんの仕事も尊い素敵なお仕事ですよね。頑張ってくださいね！まだ続編で続いておりますので、よかったらそっちも読んでってくださいねー！ (2017年11月20日 6時) (
レス) id: c5150bc668 (このIDを非表示/違反報告)
あき(プロフ) - はじめまして！今日この作品に巡り会って読ませていただきました。素敵なお話で夢中に読みました。介護士をしているのですが、上田さんのプロフェッショナルぶりに脱帽です。家族の思い、そこに向き合う姿が素敵で涙がでました。ステキなお話をありがとうございました。 (2017年11月19日 17時) (レス) id: c25913c797 (このIDを非表示/違反報告)
がくたん(プロフ) - NobuYouさん» そうそう、村上先生ね(笑)。私もつい忘れてまいそうになったので、すばるくんにあの一言を言わせましたとさ。まんま、私の心の声。笑。 (2017年10月3日 6時) (レス) id: c5150bc668 (このIDを非表示/違反報告)
がくたん(プロフ) - NobuYouさん» うわー、読破！こちらこそありがとうございました！こんな職場いいなってお声を結構いただけて。最終的には７人プラス上田しゃんのの関係性の良さが表現できたのかな？って嬉しくなりました！何しろ無事に書き終えられて良かったと安堵安堵の思い出でした(笑) (2017年10月3日 6時) (レス) id: c5150bc668 (このIDを非表示/違反報告)
NobuYou(プロフ) - 色々なことが一気に動き出しましたね。それに負けじと一気に読ませてもらいました。ありがとう！楽しかったぁ。仕事も認めあっててOFFはいつまでもバカ騒ぎができて。ホントにいいチームワーク。こういう職場で働きたいな。村上先生が医師だって、一瞬忘れてました笑。 (2017年10月2日 23時) (レス) id: beff6a0c0a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：がくたん
| 作成日時：2017年4月8日 7時
