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「…わかりました。口内炎の薬、だしますね。」
川「はい、もう痛くって、参っちゃう。笑」
そう小さく笑う川本さんの声は震えていた。
姿勢よく座っていた章大さんが、
ギシッ椅子の音とともに前屈みになって、両膝の上に肘を乗せて、両手の指を組んで、
川本さんに近づき、顔を覗きこみながら優しく言った。
「…怖いですよね。いいですよ、無理しなくて。全部、受け止めます。」
「川本さんはよく勉強してらして、自分の状況を理解する力がある。ですから、これから全部お話します。そして、どうするかよく考えてもらいたいです。」
「でも怖かったり、不安だったりするのは当然なことです。僕らには、隠さなくていいですからね。」
黙って布団のシーツをぎゅっと握りしめて、覚悟を決めたように頷く川本さん。
川本さんを見て、章大さんは続けた。
「今回の病理結果は、グレーでした。」
川「グレー…です、か。」
「はい。現段階で悪性であるとは言い切れません。ただし100%良性とも言えません。それはご存じのように、もともと川本さんがお持ちの遺伝子から考えても、悪性に転化する可能性は十分あると思います。」
「ただし、それもいつどうなるかは、現時点ではわかりません。」
「疑わしいものは取ってしまうのが極論として一番安全だとは思います。ただ、それも身体に負担がかかる事です。傷も少なからずできますし。」
川「……。」
「このまま一旦退院されて、外来で引き続き経過を見ていくことも可能だと思います。」
「ご自分の事です。よく考えて決めてください。どんな結論だとしても、僕は全面的に支持しますよ。」
暫しの沈黙の後。
川「傷……。」
川本さんがボソッと呟いた。
川「そうですね…私。傷って考えた事なかったです。」
川「こんな星のもとに産まれたことで、もちろん痛くて嫌なんですけど、身体にメスを入れるのは当たり前の感覚でした。」
川「水着も、女性としてのファッションも、…恋愛も。全く諦めてました。」
川「そうか、傷かぁ…。」
川「私も、女性ですもんねぇ…」
そう言って、川本さんは泣いた。
初めて見た涙。
章大さんは泣き止むまで優しく川本さんの背中を撫でた。
「『失礼しました』」
ﾊﾟﾀﾝ
『……なんか切ないよね。今までどれだけギリギリの状態で、自分を奮い立たせて来たのかって思ったら…。』
「なぁ。ほんまに必死に生きてこられてきたんやろなぁ。」
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がくたん(プロフ) - NobuYouさん» Nobuさんのほうが真をついてますよ、大倉先生より(笑)。仰る通り、正解なんてものはなくて。どこに重きを置くかも人それぞれ。想いの強さ、意思の強さ、願いの強さ、絆の強さ…。色んな選択肢があるなかで、この二人は何を選んでいくのか。岐路に立つ二人の話です。 (2017年9月27日 23時) (
レス) id: c5150bc668 (このIDを非表示/違反報告)
NobuYou(プロフ) - 強くなる…一生懸命頑張ったら強くなれる訳でもないし、自分では強くなったつもりでもまだまだ弱いかもしれないし。難しいですね。大倉先生の言葉、突き刺さります。 (2017年9月27日 21時) (レス) id: beff6a0c0a (このIDを非表示/違反報告)
がくたん(プロフ) - 亜季さん» 一歩踏み出して、臆する事なく道を進んでも、上田さんへの愛情、優しさは忘れない。そんな、一皮むけた安田先生ならではのプレゼントでした♪いつもしてるマ○チュのオーシャンにゴールドがあったら、きっと大事な人に送るだろうなって思って書きました♪ (2017年3月10日 23時) (レス) id: c5150bc668 (このIDを非表示/違反報告)
亜季(プロフ) - 安田先生ロマンチスト・・・！素敵！ (2017年3月10日 13時) (レス) id: 327514e65b (このIDを非表示/違反報告)
がくたん(プロフ) - 亜季さん» 私も上田さんほどの強さはありません〜(苦笑) そのくせにこんな展開にしてしまう私。笑。安田先生と上田さんのネクストステージ、見守ってくださいねー！またお待ちしてまーす♪ (2017年3月8日 7時) (レス) id: c5150bc668 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：がくたん
| 作成日時：2017年2月13日 12時
