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里「もう先生にはやるだけの事はしていただいた。前にお話した通り、この先は全部自分の責任でやってきますんで、もう結構です。」
里「ありがとうございました。」
『……。』
そう言って、頭を下げた。
気丈なようでも明らかに歪んだ眉、口元。
押さえていたけど、確かに震えていた声。
膝の上で小さく震える拳。
里崎さんの覚悟の中にも、絶望や不安、恐怖や諦めが見てとれて、胸が苦しくなって。
無意識のうちに言葉を発していた。
『里崎さん…。何か、言葉が上手く見つからないんですが…、』
『それが里崎さんの思いなら尊重しなければいけないんですけど、』
『…本当にそれでいいんですか？』
里「……」
「……、」
『私達は…、里崎さんにとっては状況も理解しないくせに口出して、煩わしいだけだったかもしれません…、』
『でも…、里崎さんが心配です…。』
『今さらご家族を探そうとか、そうゆう事じゃないんです。』
『里崎さんの今を支える為に、』
『何か…、私達にさせてもらえる事はないでしょうか…』
里「……。」
俯き黙りこんだ里崎さん。
膝の上の拳は固く握られたままで。
その姿を見て、あぁやっぱりこの思いを口に出した事すら間違いだったのかもしれない、という小さな後悔が頭を掠めた、その時。
「…家には、亡くなられた後の準備に行かれてたんですか？」
里「っ、」
『……、』
「やっぱりご自身の体ですもんね。」
「体調の変化に、気づいてらしたんですよね？」
安田先生が口を開いた。
里崎さんは小さく頷き、
里「…入院の前から息切れが出だして、熱も出たり下がったりを繰り返すようになって…。」
里「もしかしたら今回の入院で、もう家には帰れないかもしれない、と…。」
絞り出すように そう言った。
『……。』
里「散々覚悟を決めて、家のなかも全て片付けて来たはずなのに、暗い病室で眼を閉じていたら、色々心配になってきて、」
里「私を葬るのに必要な書類や金とか、母親の法要のお願いの手紙やお布施とか、あれで大丈夫かと、考えたらどんどん不安になってきて…」
里「どうしても、もう一度 確認しておきたくて…。」
安田先生は、何度も鼻と口元に掌を往復させて 鼻を啜りながら話す里崎さんをじっと見つめて、
「僕もきっとそうなります。」
「怖いですよね、死ぬのは。」
と、優しく語りかけた。
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ワイパーの姫(プロフ) - 初めまして。一から何日もかけて読ませて頂きました。笑ったり泣けてきたり素敵な作品で、毎日これを読むために頑張ろうって思っていました。ハニーラテも気になりすぎて実は今日初めて買いました笑。遅くなりましたが完結お疲れ様でした。 (2023年1月23日 18時) (
レス) @page27 id: 46324112c1 (このIDを非表示/違反報告)
8七色8(プロフ) - 久しぶりに読み返していました。この作品みると日々の幸せを噛み締めるようになるので何度でも読み返したくなる作品です。 (2022年2月13日 9時) (レス) @page27 id: aedfceb73f (このIDを非表示/違反報告)
がくたん(プロフ) - reon963さん» コメントありがとうございます！鈍レスで申し訳ありません。中等症以上の方の平均年齢が下がってきているように感じ、ワクチンの効果を実感しています。しかし現場では第５波の文字が脳裏にちらつき、まだ長い戦いだと思っております。reonさんもどうぞお気をつけて！ (2021年6月26日 11時) (レス) id: 4073c668cf (このIDを非表示/違反報告)
reon963(プロフ) - はじめまして!同じ医療従事者です!ワクチンが一般の方に届き始めました。まだ先は見えませんがこれが悲しみからの一助となることを祈りつつ主人公ちゃんが、がくたんさんが微笑むことのできる日をeighterと応援しています!マスクの中で (2021年6月15日 23時) (レス) id: 6940252d53 (このIDを非表示/違反報告)
がくたん(プロフ) - ひ み ささん» ひみささん！ご無沙汰しております、コメントありがとうございまーす！何度緊急事態宣言を繰り返そうともひとりひとりの行動が改まらない限り終わりは来ない戦いですよね。しんどいのは皆一緒、その中でどれだけ周りを思いやれるか試されているような気すらしてます。 (2021年4月27日 2時) (レス) id: 4073c668cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：がくたん
| 作成日時：2019年4月5日 15時
