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空港ん中、めっちゃ走った。



やってAが泣いた、言うから。
やっと整理していける思った心が、揺らいだから。


やっぱこんまま終わりになんかできひん。
一目会って、自分の想いを一言でも話して、
それで、決着つけたい。

やから、必死に走った。




「、おったっ、」



搭乗ゲートに向かう、遠目でも分かる潮焼けしたロングヘア。褐色の肌。


「Aっ!!!」



人目も憚らず、叫んだ。


振り返ったAはめっちゃ驚いた顔して、その場に立ちつくした。



「っ、はあ、っはっ、」ゲホッゲホッ


駆け寄った俺。
Aの目の前に来たのに、息が切れてよう声が出せんくて。
しばらく膝に手ついて息を整えてたら、

Aの手がすうっとのびてきて、
俺の首筋のチェーンを引っ張り出した。



『…ほんとにしてる……。』



自分の息切れと心臓の音がめっちゃ煩かったけど、
その向こうに聞こえるAの声が震えとったのが分かった。



顔をあげると、
大粒の涙を流して。
めっちゃいい波を乗りこなした時よりも、くしゃくしゃな顔で笑っとるAがおった。



「っ…はっ、笑ろとんの?泣いとるの?」


『…だってっ、嬉しくてっ……』




そっとAの涙を拭った。




「…やってさあ、お守りやもん。」

「離れとってもお前感じてたい言うたやろ?」


「俺、ホンマに吉村プロのファンなんやけどさぁ、」




「……めっちゃ好きやねん。今でも。」




『…うーっ、、ふうっ……』ポロポロポロッ





今度は、拭いきれない程の涙が溢れてきて。
もう俺の胸で拭いたらええねんって。
ぎゅっと強く抱きしめた。




「ほれ、"ものじち"、やるわ。」


『……え?』


「頭、下げて…。」


言われた通りに頭を下げたAの首に、
Aが引っ張り出した俺のネックレスをそっと着けた。


Aの首に手を回したまま、少しだけ屈んで。
掬い上げるように、優しくキスをした。



『…亮、これ、』

「俺のお守り貸したる。」


「次こそお前の…用意しとくから。」



『でも私、来週ハワイで…、日本に帰るの…』

「俺がハワイに持ってく。」




「も一度、ハワイから始めよ?」




俺の言葉に泣きながら何度も頷いたAは、
俺にぎゅっと抱きついて、頬にキスして。

アナウンスに急かされるように搭乗ゲートに消えてった。




最後に、とびきりの笑顔で。

あの時みたく、"ハングルーズ"をしてくれた。






〜「ひと夏の、その後。」end〜

湯気の向こう、霧のなか。→←・



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がくたん(プロフ) - runaさん» これからもヤスヌシの信条どおり、こちらにお越しくださるお客様にそっと寄り添って空気感で優しく癒せるような【まほろば】でありたいと思っております。西崎の男前一同、いつでもお待ちしておりますので今後ともご贔屓にお願いします♪ m(__)m (2019年7月7日 12時) (レス) id: c5150bc668 (このIDを非表示/違反報告)
がくたん(プロフ) - runaさん» runaさんにコメントをいただいた事で見返してみたら、もう2年が経つんやぁって驚きました(笑) 読んで下さる皆様をゆったりのんびりした世界にお連れしたくて書いたこの作品、いまだに読み返していただいてるなんて本当に嬉しいです、本当にありがとうございます! (2019年7月7日 12時) (レス) id: c5150bc668 (このIDを非表示/違反報告)
runa - このシリーズが大好きで、何度も読み返しては優しい気持ちになって、心の棘を抜いています。素敵なお話をありがとうございます。 (2019年7月7日 0時) (レス) id: 96114386de (このIDを非表示/違反報告)
がくたん(プロフ) - てんてんさん» ね!?やっぱり引きますよね(笑) でもそれをやれちゃうのがマルちゃんかなって。てゆか、私的には"二人にしか分からない暗号"っぽさが良かったのです(///∇///) だから現実の自分には目を瞑って(笑)書いてみましたー♪ (2017年8月6日 22時) (レス) id: c5150bc668 (このIDを非表示/違反報告)
てんてん(プロフ) - 確かに引くかも!笑そもそもしなきゃ!知識がないので全くわからなそう!今から勉強しなきゃ!笑素晴らしい作品なので良きなのです← (2017年8月6日 20時) (レス) id: df40b804f2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:がくたん | 作成日時:2017年7月14日 12時

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