680 ページ20
１日の授業が終わる。
今日も塾。
一時たりとも気を抜いてはいけない受験生なのに、昨日は色々あって半日以上潰れてしまった。
気を引き締めて頑張らないと。
にしても、櫻井先生は本当に学校を辞めるのを諦めてくれたのかな。
冴木先生はどうして辞めちゃうんだろう。
蘭と廊下を歩く。
向こうからやって来たのは冴木先生。
思わず俯く。
なのに、蘭は平気な顔で冴木先生に話し掛けた。
「先生、今日で終わりなの？」
「そうよ。二人とも今までありがとう」
「こちらこそ先生にはお世話になったよ。
でさ、辞めるのはやっぱり櫻井先生に振られたから？」
えっ！？
そんなダイレクトに聞くの！？
「蘭、ちょっと！」
「だっておかしいじゃん、こんな半端な時期に」
「あはは、そうよね」
冴木先生は蘭の発言に動じることなく笑う。
やっぱり怖い。
何を考えているんだろう。
「でもね、渋木さん。
恋愛ごときで仕事を辞めるなんて馬鹿げてると思わない？」
「そうかなあ。
てっきり櫻井先生と顔を合わせるのが辛いから辞めるのかと思ったのに違うの？」
「あなたの年ならそう考えるのも無理はないわね」
余裕の笑みを浮かべる冴木先生。
っていうことは、本当に違うの？
先生が私に向き直る。
思わず体に力が入る。
「私が辞めれば、櫻井先生が辞められなくなるでしょう？」
「え……？」
「あなたに協力してあげたの、日野さん。
だから、これ以上櫻井先生を苦しめないであげてね」
は……？
どういうこと？
冴木先生は櫻井先生が辞めないように、自分が学校を去ろうとしているの？
「じゃ、さよなら。
受験頑張って」
冴木先生は表情を崩さないまま、私達に背を向けた。
冴木先生は私のことは嫌いなのかもしれないけど、櫻井先生を想う気持ちは同じ。
櫻井先生に辞めてほしくないと思うのも同じだったのかもしれない。
「あのっ……ありがとうございましたっ！」
お礼を言う私に、振り返ることもしないまま。
先生は歩いて行く。
蘭が眉をひそめる。
「何あれ、どういうこと？」
「よくわかんないけど、協力してくれたみたい」
「はあ？何に？」
「櫻井先生の退職の阻止」
きっと冴木先生なりに考えてくれたんだ。
それが正しい方法なのかはわからないけど。
「まあ、良かったんじゃん？
私としては上田先生の授業を受けてみたいしー」
「３年は櫻井先生だけどね」
「チッ」
「舌打ちしない！」
秋の風が吹く。
冴木先生は去っていった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3560人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
yuko(プロフ) - オム翔さん» オム翔ちゃん、感想ありがとう♪その映画見たことない〜！あれも先生が生徒にチューしてたよね？あんな可愛い生徒がいたらやってまう気持ちもわかるけど。←なぜ先生目線ｗ最後ハッピーエンドだった？櫻井先生帰らないでほしかったね(´；ω；`) (2018年10月5日 0時) (
レス) id: 002ad326f1 (このIDを非表示/違反報告)
yuko(プロフ) - ゆりさん» ゆりちゃん、感想ありがとう♪先生も松本さんもかっこいいし素敵だし、どっちも好きだからどっちも選べないよね(笑)！贅沢な悩みだわ〜だから妄想ってやめられない(〃▽〃)生徒×教師も兄×妹も同じく禁断だしね。イケナイことばっかりでドキドキしちゃうねｗ (2018年10月5日 0時) (レス) id: 002ad326f1 (このIDを非表示/違反報告)
オム翔 - 今更ながら生田斗真君の先生！好きになっても〜を見ててなんかいろいろ重ねて読んでたらキュンキュンが増しました笑笑心配してきてくれる先生はやっぱり優しいです！でも、待っててって言ったら待っててほしかったな〜プレゼントを渡す日が来るといいですね！ (2018年10月1日 0時) (レス) id: 1863dc6a09 (このIDを非表示/違反報告)
ゆり(プロフ) - いやぁ〜イイ男二人に守られてて、そりゃどっちを選ぶか迷いますよね(笑)櫻井先生も本当に心配してくれてた！(人´▽`*)待っててって言ったのに、まさか松本さんが何か言った？！でも松本さんは松本さんで一番守ってくれるしなぁ〜(*ﾉд｀*)σどっちも選べないですよ〜 (2018年9月27日 23時) (レス) id: 7082127890 (このIDを非表示/違反報告)
yuko(プロフ) - ゆきままさん» ゆきままちゃん、感想ありがとう♪なんで桃太郎だったんだろうな(笑)お母さんとの思い出の絵本が桃太郎だったりしてね。truth、もうTVでは見られないと思ってたから嬉しかったよー！ (2018年9月27日 0時) (レス) id: 002ad326f1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：yuko
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=yashikonbu
作成日時：2018年8月25日 1時
