324 ページ12
「俺さ、雅紀の店でお前に指輪やって、それで満足しちゃって」
社長が、あらたまって話し出す。
私達の近い過去と、未来のこと。
大事な話。
「本当はその先のことの方が大事なのにな。
忙しさにかまけて、放っておいてごめん」
私は黙って、首を振る。
謝られることなんて、ひとつもない。
私だって、忙しいのを理由に社長とちゃんと話そうとしなかったんだから。
社長が黙って立ち上がって、鞄の中から取り出した紙切れを持って食卓の上に置いた。
何かと思って見たら、それは婚姻届で。
社長の字で、社長の名前が書かれてある。
「書け」
「えっ…？あの…」
「あとはお前が書くだけになってる」
はあ…
初めて見た、本物の婚姻届。
社長の名前の隣に、私の名前を？
書いていいの？
嬉しくて、嬉しくて。
手に取った婚姻届を、穴があいちゃうんじゃないかってぐらい見詰めて。
社長の名前の上を、指でそっとなぞる。
「今の仕事が片付いたら、入籍しよう」
「はぃ…」
「式は色々面倒だから、もう少し先になると思うけど…
俺の立場上、お前の希望は叶えてやれないかもしれない」
「…いいです、そんなの」
「いいのか？一生に一度だぞ？」
「フフ、もう夢見るお年頃でもないし。
結婚式よりも、社長と結婚するって事実の方が私にとっては大事だから」
「…そっか」
社長の目が、優しく弧を描く。
結婚…出来るんだ？
社長と私が。
「結婚指輪はお前が選べ。
婚約指輪は俺が勝手に選んだから」
「…はい！」
ああ、ホントに？
明日、会社帰りにカタログをもらいに行かなくちゃ。
どんなのがいいんだろう。
社長とお揃いのリング。
プラチナだよね？
シンプルな方がいいかな。
お揃いって、何気に初めてかも！
想像を巡らせながら浮き足立つ私を、社長が「A」って現実へと引き戻す。
「はい？」
「これは…お前の意に沿わないことだと思うけど」
社長が、重そうな口を開く。
何を言われるんだろうと、身構えて。
息を飲んで、社長の次の言葉を待った。
「会社は辞めてほしい」
社長が私に、ハッキリとそう言った。
多分、言われるんじゃないかって予想はしてた。
だから、思っていたほどショックじゃなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 4442人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
yuko(プロフ) - ひびきさん» ひびきちゃん、感想ありがとう♪なぬ！松本課長のスピンオフとな！考えてもみなかった！彼はねえ…ちょっとねえ、キャラが…ｺﾞﾆｮｺﾞﾆｮ (2016年7月15日 0時) (
レス) id: 7b49a3b518 (このIDを非表示/違反報告)
yuko(プロフ) - さーちゃんさん» さーちゃん、感想ありがとう♪あっちにも感想くれたんだね、ありがとう！相葉くんのお話は現在連載中ですよ。翔くんも出てくるけど。私のお話のあいばくんはいつも一般人だよーリアル設定はなぜかどうも書けない！ (2016年7月15日 0時) (レス) id: 7b49a3b518 (このIDを非表示/違反報告)
yuko(プロフ) - 朔夜さん» 朔夜ちゃん、感想ありがとう♪幸せだよね(T_T)ずっとこの幸せが続けばいいのに〜！そうはいかないのがお話の世界なんだー_:('Θ' 」 ∠):_ (2016年7月15日 0時) (レス) id: 7b49a3b518 (このIDを非表示/違反報告)
yuko(プロフ) - 杏さん» 杏ちゃん、感想ありがとう♪二人に試練、訪れます。過去最高の。そうしないと私が思い描くラストに辿り着けないから。ドＳかつドＭな作者でごめんなさいね(ﾉ≧∀≦) (2016年7月15日 0時) (レス) id: 7b49a3b518 (このIDを非表示/違反報告)
ひびき(プロフ) - 潤くんのお誕生日、ここの潤くんのスピンオフとか読みたいなぁ…(笑)可愛くおねだりしてみようかな！？(笑) (2016年7月13日 23時) (レス) id: 621028193c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：yuko
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=yashikonbu
作成日時：2016年6月10日 1時
