18 ページ18
.
.
.
たまたま、学校で補講があって帰りが遅くなってしまった。
電車の乗り継ぎも上手くいかなくて、今の時刻は20時。
晩御飯も作る元気がないから、お惣菜コーナーを物色して出来合いのものだけ買ってきた。
荼毘くんが帰ってくるまで、まだ時間があるはず。
「(あれ、鍵開いてる。)」
誰もいないはずの家の鍵が開いていて違和感。
私の家の合鍵を持つのは一人しかいないけど…まだ20時なのに？
ガチャ、と音を立てて自宅のドアを開けると、焦げ臭さと共にすぐそこに立ちすくむ荼毘くんがいた。
「早いね、もう帰ってたんだ」
「…」
「ただいま荼毘くん」
今日ご飯サボっちゃったーと言いながら、靴を脱いで台所に向かう。
立ちすくむ荼毘くんの横を通り過ぎようとした時、腕を引かれて荼毘くんの腕の中にぼすんと収まった。
「うお、どうしたの」
ぎゅう、と私を後ろから抱き締めたまま、荼毘くんは言葉を発さない。
え、怖、金貸せとか言われそう。
「…弱ってる」
「弱ってる人は自分のこと弱ってるとは言いません」
「じゃあ弱ってない」
「どうしたのよもう〜〜」
何があったのかはわからないけど、ジメジメしている。
荼毘くんが。
腕の中でもそもそと動いて、荼毘くんに正面に向き合う形で私の方から抱き着いてやる。
「…笑わねぇ？」
「なんで、笑わないよ」
「…今日の朝方、実は嫌な夢見た」
「…ぷ、」
「おい、笑うなっつったろ」
「荼毘くんも可愛いとこあるじゃん」
バカにしてんのか、と悪態を着くけど、抱き締めた腕は一切離そうとしない。
…余程嫌だったんだろうな。
「だから早く帰ってきたの？」
「…」
「そっかぁ」
荼毘くんのこと、何も知らないけれど、今まで沢山辛いことがあったことは知ってる。
触れ合ってる今も、荼毘くんの辛い気持ちがぐるぐると私の頭の中で回る。
私は何も代わってあげられなくてごめんね。
「辛かったのによく頑張りました」
仕方ないから、今日は私が下の布団で寝て、荼毘くんはフカフカのベッドで寝ていいよ。
.
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 979人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
狐宮(プロフ) - 流石に神作すぎる。更新待ってます！！ (3月17日 11時) (
レス) id: a0c6b76223 (このIDを非表示/違反報告)
エスプレッソ - めちゃくちゃ好きです！続きが楽しみです！ (2月2日 20時) (レス) id: de6ec814a1 (このIDを非表示/違反報告)
白うさぎ - 更新楽しみです！頑張ってください！ (2月2日 9時) (レス) @page31 id: ddc71ea2f6 (このIDを非表示/違反報告)
ねかあ(プロフ) - あああああああああああああああ！JKに手出してるホークスさいこおおおおお！ (1月26日 19時) (レス) @page31 id: 39dbcee998 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぴこ - うわ、もうめちゃくちゃ好きです。更新頑張ってください、、 (1月25日 1時) (レス) @page31 id: c43eafab12 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：八尋 | 作成日時：2022年12月8日 20時
