27時間 ページ28
.
人の考えていることが、少しはわかるようになったと勝手に思い込んでいた。
感情を読み取ることが苦手な私は、まだ人を傷つけることは絶えないと思う。それと同時に、自分の愚かさを知る。
あの子は、どうしていつもわからない顔をするんだろう。
傷ついたような顔を向ける彼が、私の脳裏に焼き付いて消えない。申し訳なさと、わからない悔しさがあって、相変わらず自分は情緒不安定なまんまだ。
できることなら私は、彼を解りたい。
.
.
ぱち、と目が開くと、何度も見た景色。独特の匂いは変わらない。昔は得意ではなかった薬のきつい匂いも、何度もここに通えばいつしか居心地のよいものになっていた。
｢おや、起きたね。｣
｢………リカバリーガール…｣
｢基礎学終わりに教室帰って、うたた寝したらそのまんま四日寝るなんて、普通の子ならありえないねぇ｣
まぁアンタは普通じゃないわね、とリカバリーガールはせかせか仕事を進めた。私は普通じゃない。それはたしかに自覚している。
あれから四日も寝たのか。基礎学の授業でようやく起きれるようになった、なんて舞い上がってる場合じゃなかったのだ。個性の副作用は留まることを知らない。
ほぼ一週間の授業内容が抜けた、なんて冗談じゃない。
早く副作用を治せるようになりたい。少しでも希望が見えたなら、それに突っ走るしかない。
｢リカバリーガール、私｣
｢そういえば二日前、轟がアンタの事ここに寝かせるよう頼んできたんだが、アンタらそんなに仲良いのかい？｣
リカバリーガールが若者の恋道を見守るかのように頬を抑えてニコニコと首を傾ける。
｢はェ！？｣
耐えきれない私から、間抜けな声が出た。ボッと顔が一気に熱くなるのを感じる。
｢そっ、そんなんじゃ、｣
｢別に深くは聞かないけどねぇ｣
あれ、どうしてこんなに焦ってるんだろ。轟くんのこと気にしてたから？仲がいいのかと指摘されただけなのに、やはり彼のことで情を乱す。
苦しさを紛らわせるために頭を搔くと、不意に仮眠室のドアが開く。どうやらもう放課後なようで、ドアが開けば外の生徒達の喋り声が一気に耳に入ってきた。
ドアを開けた本人というのは
｢とど、……爆豪くん｣
｢寝すぎて頭までおかしくなったか毒女｣
望んでいた人ではなかったが。
不満な顔を向ければ相手も苛立ちを見せて、用件を言えばすぐに帰ってしまった。
｢テメェに話あっから、整理ついたら寮帰ってこいクソが｣
.
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 538人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なおみ(プロフ) - 完結おめでとうございます!! ホントに、白雪と轟くんがひっついてよかった！ 作品読んでると泣きました(´；ω；`)こんな良い作品をありがとうございました!!! (2017年12月19日 17時) (
レス) id: 73e619451a (このIDを非表示/違反報告)
赫夜 - 八尋さんこんばんはご無沙汰ぶりです赫夜デス！！夜分遅くでもお仕事ご苦労様デス(*^^*)！！先程仕上がったこちらがわの内容一部を読ませて頂いたところ主人公ちゃんは揺るで余り恋愛感には無しな感じですが次回はどう言った展開になるのか楽しみにしてます！！ (2017年9月5日 21時) (レス) id: 09a4a3c559 (このIDを非表示/違反報告)
RAIN - 赫夜さん» こんにちは。あまりたくさんのコメントは作者さんの負担になるのでやめた方がよいのでは？影ながらひっそり応援していくのも読者の役目だと思いますよ。自分はたくさんのコメントは返すのも負担なので嫌だとは思いますが。 (2017年8月28日 20時) (レス) id: eb5387909c (このIDを非表示/違反報告)
赫夜 - 八尋さんおはようございます赫夜デス！！徹夜までのお仕事ご苦労様デス(*≧∀≦*)先程の内容一部を読ませて頂いたところ爆豪は主人公ちゃんの事が気に食わないそうで何回か良く挑戦を申し込んでるそうですがひょっとしたら…(*_*) (2017年8月26日 8時) (レス) id: 09a4a3c559 (このIDを非表示/違反報告)
赫夜 - 八尋さんこんにちは赫夜デス夕方のお仕事ご苦労様デス！！先程仕上がった内容一部を読ませて頂いたところ次の日主人公ちゃんは何と爆豪と珍しく一緒に登校してきたそうですが果たして次回内容はどうなって逝くか気になりますね(^ー^)今後をお待ちしております！！ (2017年8月24日 17時) (レス) id: 09a4a3c559 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：八尋 | 作成日時：2017年8月17日 19時
