Episode8 雑談 ページ10
『はは、そんな慌てて食べなくてもベーコンは逃げないよ』
ベーコンを前にして一気に目の色が変わりすぐに平らげてしまったTordを見て思わず笑いが零れる。もしかしたら多忙な研究生活でろくに好物も食べられなかったのかもしれない。
予想より遥かに早くベーコンを食べ終わってしまったTordに、私は余っていた自分のベーコンをひとつ譲る。
「いいのか?」
『うん。そんなお腹減ってないし』
嘘です。めっちゃ減ってます。
でも嬉しそうなTordの顔もっと見たいからね。
大層機嫌が良さそうなTordを正面から微笑ましく見守る。朝食も特に警戒も無く素直に食べてくれたので、きっともう私に対する敵意はないだろう。
警戒心が解かれた所で、私はある質問をTordに投げかけた。
『それで…Tordはなんでこっちの世界に来たのか心当たりある?』
「ん?あー…まあ話してもいいか。多分あの機械が作動したからだと思う」
『あの機械?』
「ああ」と頷きながらTordは食パンを頬張る。
「俺さ、軍の研究所に配属されてたんだけどその時上のヤツらから機械を造れって命令が来てさ」
『ふむ』
「どんな機械かは知らされないまま設計図だけ叩き付けられてな。命令通りに造って試しに動作を確認したんだ。で、気付いたらAの家にいたってわけだ」
『災難だったね。でも軍で造った機械なら直ぐに迎えが来るんじゃ…?』
「アレはそんな簡単に作動出来る装置じゃねぇよ。動かすのも複雑で一苦労だ。しかも動かし方は俺しか知らない。作動方法を解明するのにも結構時間かかるかもな」
『ほーん…?』
なるほど。だから同居を決めた時も「しばらく世話になる」って言ってたのか。あの発言ってちゃんと根拠のある言葉だったのね。
そんなことを考えていると、突然Tordがこちらをじっと見つめて眉を下げた。
「あー……それで…Aは快くしばらく一緒に暮らすの許可してくれたけどさ、金銭面とか大丈夫なのか?」
『ん、全然大丈夫。最近宝くじで7億当たったし2人で生活する分には全く問題ないよ』
「7億?日本の単位は分かんねぇな…ユーロじゃどのくらいなんだ?」
ユーロ……ああ、ヨーロッパのお金の単位か。
私はポケットからスマホを取り出し検索を掛けてみる。ふむ…
『調べてみたんだけどざっと500万ユーロくらいらしい』
「500万?!?!」
ガタッと椅子を倒してTordがこちらに詰め寄る。まあその反応になるのも無理ないか。でも距離が近いのはやめてくれ。心臓に悪い。
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ベンザチャン(プロフ) - 久しぶりの更新嬉しいです!!Tordと夢主の相性が抜群ですね!!!(?)無理せず更新頑張ってください! (2023年1月25日 8時) (レス) id: 7db4a09c58 (このIDを非表示/違反報告)
大祝 - お久しぶりですー!この作品大好きだったので更新嬉しいです! (2022年10月28日 17時) (レス) id: e74f7c17fb (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - いつも楽しみに待っていました!これからの展開を楽しみにしています! (2022年10月28日 17時) (レス) @page29 id: e11f93c1d4 (このIDを非表示/違反報告)
omio(プロフ) - 更新待ってました!来る日も来る日もチェックさせて頂いていましたが本当に嬉しすぎてやばいです!!次の更新も心待ちにしてます! (2022年10月27日 18時) (レス) id: 0610d9afb5 (このIDを非表示/違反報告)
ベンザチャン(プロフ) - 久しぶりの更新嬉しいです!相変わらずの豊富な語彙力羨ましいです…!無理せず更新頑張ってください!! (2022年10月27日 8時) (レス) id: 05631b7c6e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はちまき | 作成日時:2022年7月10日 21時