Episode21 維持 ページ23
身体を起こしたTordは少し気だるそうに頭を搔くと、向かいに座っている私へ視線を移す。
「ま、勘のいいAは薄々気が付いてんだろうけど…俺はただお前と寝たいが為に誘った訳じゃない」
……うん。とっくに気づいてましたよ。
そう怪訝な目を向ければ、彼から返ってきたのは心底愉快そうな笑みだった。
「話が早そうで助かる」
『__……あー…それで……話とは?』
「気構えんなよ。そう大した話じゃねーし」
さっきまでの妖艶な彼はどこへやら。私の前にはいつものように口角を僅かに上げているTordの姿がある。心做しか周りに漂っていた張り詰めた空気が和らいだ気がした。
「…Aさ、なんかまだ俺に対して疑念というか不安感抱いてるだろ」
『(…バレてたか)』
流石は軍人兼科学者といったところか。人の考えを見抜く事に長けている。戦場の敵の作戦を読み取る為に心理学にでも触れたのだろうか。
考えを当てられてしまい沈黙を貫いていると、Tordは「やっぱりそうか」と項垂れた。
「あ"ー…まあ、あれだ。いきなり別世界から来たとかいう男を信用するのも難しい話だしな。少なくとも俺はAの事信用してるし信頼してる。それだけは覚えててくれ」
『____』
「…なんか言えよ」
『__…あのTordが人に気を使ってる……』
「おいどのTordだ言ってみろ」
驚いた。あのTordが人を思って何か言うとは…
と、Tordに軽く胸ぐらを掴まれながら頭の片隅で思う。『冗談デス冗談デス』と言いながらなんとかTordを宥めると、私達は再びベッドの上で向かい合ったまま沈黙に浸かった。
チラ、とTordの様子を伺ってみる。
怒りなのかさっきの発言からくる羞恥心からなのかほんのり顔が紅潮している。かわいい。
『…思ったんだけどさ、その話するだけなら別に私と同衾する必要無かったんじゃ?』
「男と女が気兼ねなく話せるタイミングなんてベッドの上くらいだぜ?俺なりに場所考えただけだ」
『待て待て、ベッドの上で男女が気兼ねなく話す時ってピロートークって事だろ??????』
おい目を逸らすんじゃない。
まさかコイツあわよくば私を喰うつもりだったんじゃ……いやそんな訳…………ありそうだな。最近Tordの発言の一つ一つが怪しすぎる。まだ会って3日くらいの女だぞ???(2回目)
うーん…やっぱり何か企んでるんじゃ…でもさっきの発言が嘘とは取りにくいんだよなぁ。
__まあ、今はこれでいいか。
『なんか考えるの疲れてきた…今日はここで寝る』
「性的な意味で?」
『どつくぞ』
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ベンザチャン(プロフ) - 久しぶりの更新嬉しいです!!Tordと夢主の相性が抜群ですね!!!(?)無理せず更新頑張ってください! (2023年1月25日 8時) (レス) id: 7db4a09c58 (このIDを非表示/違反報告)
大祝 - お久しぶりですー!この作品大好きだったので更新嬉しいです! (2022年10月28日 17時) (レス) id: e74f7c17fb (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - いつも楽しみに待っていました!これからの展開を楽しみにしています! (2022年10月28日 17時) (レス) @page29 id: e11f93c1d4 (このIDを非表示/違反報告)
omio(プロフ) - 更新待ってました!来る日も来る日もチェックさせて頂いていましたが本当に嬉しすぎてやばいです!!次の更新も心待ちにしてます! (2022年10月27日 18時) (レス) id: 0610d9afb5 (このIDを非表示/違反報告)
ベンザチャン(プロフ) - 久しぶりの更新嬉しいです!相変わらずの豊富な語彙力羨ましいです…!無理せず更新頑張ってください!! (2022年10月27日 8時) (レス) id: 05631b7c6e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はちまき | 作成日時:2022年7月10日 21時