Episode19 緊迫 ページ21
「どうした?なーにそんな緊張してんだよ」
こ、コイツ…っ!分かってて言ってやがる……!!
今すぐにでもこの男の頬を張り倒したい衝動に駆られるが、口の中のおかずを勢いよく噛み砕く事でなんとか抑えた。そんな私の様子を心底楽しそうに眺めるTordの考えが全く分からない。
私はTordに対し不信感を募らせながら食器をシンクへ置いた。
***
『………………』
__私は今、例のベッドの上へ正座で待機している。Tordはまだ浴室にいるため、先に風呂を済ませた私がこの部屋にいるって訳だ。
『……あーもう、それもこれも全部Tordの野郎のせいだ………』
どうしても顔に集中する熱に耐えかね、この焦燥感の原因の人物である男を恨めしく思う。これじゃまるで初夜に緊張する彼女みたいじゃないか。そんなんじゃないのに。
ベッドに顔を埋めて悶えていると、廊下を歩く足音が扉の向こうから近づいてきていることに気が付いた。
ガチャリ、と扉がゆっくりと開く。
部屋に入ってきたのは髪をしっとり濡らしたTordだ。水も滴るいい男、とはまさにこの事。いつも以上に艶やかに見え思わず息を飲む。
「__見蕩れてんの?」
『はっ、バッカそんなんじゃ…』
「へーへー分かってるって」
こっちの気も知らないでヘラヘラしながら隣に座るTord。少しの間沈黙が続く。
Tordの様子が気になりチラりと盗み見ると、彼は頭を雑に拭きながらスマホを弄っていた。何を調べているのか気になったが、英語だらけでさっぱり分からない。
……なんか少し頭が冷静になってきたな。
しれっとスマホを弄っているTordを眺めているうちにそんな考えが頭をよぎる。そもそもそこまで緊張する必要なんか無かったのだ。男に慣れていなさすぎる自分にため息が出る。
様子を見るにまだTordは寝る気がないようだ。なら私は自室に戻って絵でも描いてようかな、とおもむろにベッドから腰を上げる__
「__何してんの」
『え』
上げたはずの腰に手を回され、私はそのままベッドへ仰向けに転がった。
呆気に取られている私を他所に、少し不機嫌そうなTordが上から顔を覗き込む。血のような紅い瞳に射抜かれ、思わず身体が硬直した。
「逃げんなよ」
『いやいやいやだってTordまだ寝る気無さそうだったから』
「ふーん…で、自室に戻ろうとしたって?」
『まあ…』
不愉快そうに目を細めるTord。えー…どういう反応……
Tordは手に持っていたスマホを枕元に放り投げると、私に覆い被さる形でベッドへのしかかった。
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ベンザチャン(プロフ) - 久しぶりの更新嬉しいです!!Tordと夢主の相性が抜群ですね!!!(?)無理せず更新頑張ってください! (2023年1月25日 8時) (レス) id: 7db4a09c58 (このIDを非表示/違反報告)
大祝 - お久しぶりですー!この作品大好きだったので更新嬉しいです! (2022年10月28日 17時) (レス) id: e74f7c17fb (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - いつも楽しみに待っていました!これからの展開を楽しみにしています! (2022年10月28日 17時) (レス) @page29 id: e11f93c1d4 (このIDを非表示/違反報告)
omio(プロフ) - 更新待ってました!来る日も来る日もチェックさせて頂いていましたが本当に嬉しすぎてやばいです!!次の更新も心待ちにしてます! (2022年10月27日 18時) (レス) id: 0610d9afb5 (このIDを非表示/違反報告)
ベンザチャン(プロフ) - 久しぶりの更新嬉しいです!相変わらずの豊富な語彙力羨ましいです…!無理せず更新頑張ってください!! (2022年10月27日 8時) (レス) id: 05631b7c6e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はちまき | 作成日時:2022年7月10日 21時