Episode4 和解 ページ6
先程までの生きるか死ぬかの緊張がどっと押し寄せる。今更ながら私の額は尋常ではない汗でびっしょりと濡れていた。
その時ふと、“推しになら殺されてもいい”とか言ってる輩がいたのを思い出す。例に漏れず私もその1人だったわけだが、今回の出来事でその考えは一蹴される事になった。やっぱり死ぬのは怖い。
「…」
そんな私をTordは先程からずっと黙って見下ろしている。何を考えているのだろうか。とにかく今はそのお手持ちの銃をさっさと仕舞ってもらいたい。
……普通、銃を向けられればその相手を恐怖の対象と見てしまうだろうが、幸い長年の彼への想いと顔の良さが相まってPTSDにはならなさそうだ。
チラ、と彼を盗み見る。
何かを考え込むように顎に手を当てる仕草はまさに芸術の域に達しているほど美しかった。黙っていればいい男とはまさにこの事か。
___まあ、そんな事はさて置き話を一番最初まで戻そう。
最近当たった突然の7億、所謂逆トリップというものをしてきたTord……私はこの2つに関連性があるのではないかと疑ってやまない。あまりにもタイミングが良すぎるのだ。
今の彼はおそらく帰る方法も分かっていないのだろう。なら、大金を手にした私がやる事はひとつだ。
『…………あの、Tordさん』
「何だ?」
『きっと帰る方法、分からないんですよね?ならその方法が見つかるまで一緒に暮らしませんか?』
__そう、この大金はきっとTordが帰れるまで不自由がないようにという神からの贈り物だ。些か金額が過ぎるような気がするが、今はそう思っておこう。
そんな私の申し出に、Tordは目を丸くしている。少し目を泳がせると、それまで間合いをとっていた私との距離をぐっと狭めた。
その御尊顔が1m以内に近付く。ときめきか恐怖心かは分からないが、心臓が一瞬ドクッと跳ねた。
「…そうだな、ここを離れて行動するより俺が連れてこられたこの場所にいた方が帰れる確率も上がるってもんだ____
じゃ、これからちょっと世話になるな」
『!!』
初めて向けられた彼の笑顔。
営業スマイルなのかもしれないが、ずっと彼を想っていた身としてその顔の破壊力は抜群だった。画面越しに何度も見たその表情が今自分に向けられている、と思えば思うほど大きな感情が湧き出てくる。
あ〜〜〜生きててよかったぁ〜〜〜…
……おっと、少し取り乱してしまった。気を取り直さなければ。
私は1度大きく深呼吸をすると、不思議そうな顔をしているTordへ向き直った。
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ベンザチャン(プロフ) - 久しぶりの更新嬉しいです!!Tordと夢主の相性が抜群ですね!!!(?)無理せず更新頑張ってください! (2023年1月25日 8時) (レス) id: 7db4a09c58 (このIDを非表示/違反報告)
大祝 - お久しぶりですー!この作品大好きだったので更新嬉しいです! (2022年10月28日 17時) (レス) id: e74f7c17fb (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - いつも楽しみに待っていました!これからの展開を楽しみにしています! (2022年10月28日 17時) (レス) @page29 id: e11f93c1d4 (このIDを非表示/違反報告)
omio(プロフ) - 更新待ってました!来る日も来る日もチェックさせて頂いていましたが本当に嬉しすぎてやばいです!!次の更新も心待ちにしてます! (2022年10月27日 18時) (レス) id: 0610d9afb5 (このIDを非表示/違反報告)
ベンザチャン(プロフ) - 久しぶりの更新嬉しいです!相変わらずの豊富な語彙力羨ましいです…!無理せず更新頑張ってください!! (2022年10月27日 8時) (レス) id: 05631b7c6e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はちまき | 作成日時:2022年7月10日 21時