ちょっと後の時間 ページ28
「暇なんですか？」
純粋で失礼な疑問をぶつけた。
少年の声に視線を向けるその人物は、周囲にも目を向け、
「あ、私か」
と、演奏を止めて口にした。
他に誰がいると思ったのか少し不思議だったが、ジャングルジムから飛び降りたその人に近付き、「それ、何て名前でしたっけ」と尋ねた。
「ハーモニカ」
それだ。
「そっちは忙しそうだね」
そう言われて、買い物帰りだったことを思い出した。
「味噌汁？」
「だと思います」
「作るんじゃないんだ」
「作るのは母ですから。おつかいの帰りなんです」
興味の無さそうな返事をして、公園を出ていった。
予想通りの夕食を食べ終え、自室の布団に潜り込む。
公園の人物の姿が浮かんだが、取り敢えず頭のすみに追いやった。
翌日午後５時。
奴はいた。
「・・・やっぱり暇なんですか？」
「しばくぞこのクソガキ」
しばきながら言われても困る。
「私は暇潰しに忙しいの」
「暇なんじゃん」
「そっちこそ、今日も親のパシリ？」
「まぁ、否定はしませんけど」
ハーモニカは、持っていない。
「今日は肉じゃが？」
「いつから夕食当てゲームになったんですか」
「当たってんのかよ」
当たってんですよ残念ながら。
「今日は、吹かないんですか？」
目を逸らしながら言う少年に、きょとんとした表情のその人物は「なに、聞きたいの？」と返す。
「ハーモニカって、初めて聞いたんで」
「ああ分かる。私も吹いたの昨日が初めて」
その言葉に驚く少年。
「初めてであんなに上手いなんて頭おかしいんじゃないんですか」
「前半超否定するのと後半ツッコミ待ちならグーでツッコむけど」
「初めてじゃないんですか？」
「『上手い』ってところを否定したいんだけどなぁ」
初めてだったんだ、と少年は目を丸くする。
「てか少年、学校は？今日平日でしょ？」
「小学１年生はこんなものですよ」
「大学生の感覚だった」
「大学はこんなに自由なんですか？」
「単位落とさなきゃ良いってわけじゃない気もするけどそこそこそうかもね」
なんて普通に話している自分に、自分はバカなのでは、と疑い始める少年。
「ところで少年、学校、実はけっこう嫌いでしょ」
その人物は唐突に話題を変えた。
「『実はけっこう』って、好きですなんてアピールしたこと無いですけど」
「嫌いなのは否定しないんかい」
この二人、誘導尋問に引っ掛かりすぎではないだろうか。
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若葉 - センス!!!神っすか!?!?!?!?!? (2020年4月3日 19時) (
レス) id: 4dface175c (このIDを非表示/違反報告)
マロン - 今さらながら完結おめでとうございます！いきなりですが最後の「七年後の時間」の意味がよく分からなくて、、、すみません。卒業して七年後のどういう場面でしょうか？ (2019年11月7日 20時) (レス) id: 81eb5f8e4a (このIDを非表示/違反報告)
糖分 - 完結おめでとうございます。これだけ長い小説で飽きずに読めたのはこの小説が初めてで、それほど文才があるんだな…と思いました。これまで、楽しませていただき、ありがとうございました。長文失礼しました。 (2018年12月1日 21時) (レス) id: 3016699a85 (このIDを非表示/違反報告)
月読(プロフ) - 茅野ちゃんのくだりでボロボロと泣いてしまいました、我ながら恥ずかしい、、笑 完結おめでとうございます！最後まで夢主ちゃんは落ちなかったですね…私本当はそういう系あんまり好きじゃないんですけど、この作品は別格で最高でした！ありがとうございました！ (2017年11月28日 0時) (レス) id: 720095c5ce (このIDを非表示/違反報告)
キャンディット(プロフ) - ドライすぎるアイスさん» そうですか… ありがとうございます！ 完結おめでとうございます！！！！！！！！ (2017年10月1日 5時) (レス) id: 8583ad440a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ドライすぎるアイス | 作成日時：2017年3月17日 2時
