７年後の時間 ページ27
少年は通学路を歩いていた。
いつもと変わらない町並みを横目に、自宅まで歩を進める。
７歳になる今年から母が職場に復帰し、鍵っ子デビュー。
父は元々家に居ない事が多いので、家に帰っても母が帰ってくる19時まで自分以外誰も居ない。
「ただいま」
返事が返ってこないのにも慣れた。
母が帰ってくるまで、家で宿題をしたり本を読んだり録画したアニメを見たりして暇を潰していた。
たまに、家の電話に母からの留守電で頼み事を頼まれ、それをする。
今日は、ネギと味噌、豆腐を買っておいてくれというものだった。
今日はお味噌汁だろうか。
リビングのテーブルに千円札が２枚置いてあるので、おつかいの予感はしていた。
ランドセルをテーブルに立て掛けて、それを掴んで、また外に出る。
太陽が世界を照らしている。
太陽に照らされ、自分も世界の一部なのだと思い知るこの瞬間が、昔から苦手だ。
太陽に背を向けて、スーパーまで歩く。
自転車に乗った主婦やのろのろと歩く老婆、ガタゴトいいながら動く電車や無音で通り過ぎる車。
スーパーで全て買い終えて、帰路につく。
そこで、聞いたことのない音が聞こえた。
曲は知っている。
ＣＭか何かでよく流れでもしているんだろう。
ふと足を止め、その音の正体を探してみた。
視界にある公園から聞こえてきていると気付き、前へ進んで確かめた。
ジャングルジムのてっぺんで、それを吹いている人間を見つけた。
淡い色のパーカーの、フードを被っている。
左耳の後ろ辺りで緩くシュシュに結われた、おろせば肘くらいの長さであろう髪は左肩から前にやさしく重力に従っている。
膝下までの余裕のあるズボンからは、そこそこ細い脚が足首まで隠れるスニーカーに包まれている。
担任教師がやると偉そうにしか見えなかった足を組んでいるその姿勢からは、偉そうにしている感じは全くしなかった。
閉じられているまぶたが僅かに開いて見せたその瞳は、背にしているはずの太陽の光を反射しているかのように美しく。
その人の奏でる楽器の音は、公園の木々を踊らせているかのようで。
音の正体は、あれだ、鍵盤が無いやつ。
突如吹いた強風に驚いて、小さな声が出た。
それにフードがさらわれたその人物は、構わず演奏を続けている。
無意識に一歩踏み出していた足を、意識的に前へ進めた。
風に揺れるビニールの音が耳障りだと感じた。
演奏中にも関わらず、声をかけてしまった。
「暇なんですか？」
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若葉 - センス!!!神っすか!?!?!?!?!? (2020年4月3日 19時) (
レス) id: 4dface175c (このIDを非表示/違反報告)
マロン - 今さらながら完結おめでとうございます！いきなりですが最後の「七年後の時間」の意味がよく分からなくて、、、すみません。卒業して七年後のどういう場面でしょうか？ (2019年11月7日 20時) (レス) id: 81eb5f8e4a (このIDを非表示/違反報告)
糖分 - 完結おめでとうございます。これだけ長い小説で飽きずに読めたのはこの小説が初めてで、それほど文才があるんだな…と思いました。これまで、楽しませていただき、ありがとうございました。長文失礼しました。 (2018年12月1日 21時) (レス) id: 3016699a85 (このIDを非表示/違反報告)
月読(プロフ) - 茅野ちゃんのくだりでボロボロと泣いてしまいました、我ながら恥ずかしい、、笑 完結おめでとうございます！最後まで夢主ちゃんは落ちなかったですね…私本当はそういう系あんまり好きじゃないんですけど、この作品は別格で最高でした！ありがとうございました！ (2017年11月28日 0時) (レス) id: 720095c5ce (このIDを非表示/違反報告)
キャンディット(プロフ) - ドライすぎるアイスさん» そうですか… ありがとうございます！ 完結おめでとうございます！！！！！！！！ (2017年10月1日 5時) (レス) id: 8583ad440a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ドライすぎるアイス | 作成日時：2017年3月17日 2時
