お友達から始めよう 2

91話 ページ41

六限目の終わりを告げるチャイムが鳴り、本日最後のホームルームも手短に終了する。
　Aは広げていたノートをリュックサックにしまうと、もう一冊を手に取って席を立つ。


「ノート、見せてくれてありがとう」
「早かったな。もういいのか？」


　向かった先は轟の机だった。
　保健室から戻った際、彼から渡されたのは五限の数学の授業内容が写されたノート。
　それをAは空き時間に書き写していた。

　轟がノートを受け取ると同時に「エラく調子づいちゃってんなオイ！！」と怒鳴る少年の声が聞こえた。
　いつの間にか出入口は人で溢れ、更には爆豪の反感を買った者たちが廊下で声を荒らげている。

　帰れそうにないな、とAは雨宿りをする時のように止む様子のない騒がしさに目を伏せた。


「人混み、嫌いなのか」
「……うん」
「前も嫌がってたよな」


　対して轟は特に変わった様子もなく人混みを見つめている。
　前とは一体いつのことかと思い返すよりも先に、轟が顔色を変えずに振り向いた。


「ずっと謝りたかったんだ。前の昼に警報鳴った時、腕を掴んだのは俺だ。押し流されちまいそうだったから引っ張ろうとしたんだが、お前、嫌がってただろ」
「……ああ、あれって轟くんだったんだ」
「悪い。痛かったよな」

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