86話 ページ36
「あれっ、千歳は?」
「保健室ー。頭痛いってよ」
「そういや朝から元気なかったよな」
「俺らが来た時にはもう寝てたじゃん? 軽く揺らしても起きなかったし、かなり具合悪いんじゃねーのかな」
四限目を終えた教室には賑やかな人溜まりと食堂に向かう道ができている。
両方ともAの姿は無かった。
昼食を共に取ろうとしていた切島は、今朝の様子を口にしていた上鳴と瀬呂に連れられて教室を後にした。
話を耳にして、最後列に座っていた少年も立ち上がる。
談笑を続けるクラスメイトたちはその行動を気に留めることはない。
廊下を歩き進める指先には、まだ新しい赤い液体が浮き出ている。
先刻の授業中、不意に教科書の端で切れてしまったのだ。
この程度の傷は舐めれば治る、と始めは頭の片隅で考えていた。
だか、行き先に先客がいることが彼にとって都合がよかった。
紅白の髪を揺らす轟焦凍は一つの迷いもなく保健室の扉を叩いた。
「はいはい、どうしたんだい」
リカバリーガールは二つ設置されているベッドの内の一つ、閉まりきったカーテンから顔を出した。
怪我の経緯を伝えた轟は手際良く箱から取り出された絆創膏を受け取って貼り付ける。
話せる状態じゃないな、と机に無造作に置かれていた来室記録に名前を書き込んだ。
「そうだ。アンタ、この子と同じクラスだったね」
この子と呼び指し、閉ざされていたカーテンが捲られた。
手元にあったバインダーも気付けばリカバリーガールの手の中に収まっている。
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やおや(プロフ) - パイナップルさん» お返事が遅くなってしまい申し訳ありません…。ご感想ありがとうございます。亀更新ですが楽しんでいただけるよう頑張ります! (2023年2月5日 21時) (レス) id: b7b6f6768c (このIDを非表示/違反報告)
パイナップル(プロフ) - すごく好きです!更新楽しみにしています! (2022年9月14日 23時) (レス) @page19 id: 16127b2cec (このIDを非表示/違反報告)
やおや(プロフ) - すめしさん» ご感想ありがとうございます。所々謎の多い設定を詰め込んでますが、お話が進むにつれて明らかになるような構成となっておりますのでその点も含めて今後もお楽しみ頂ければ幸いです…! (2021年4月20日 0時) (レス) id: 889f105f89 (このIDを非表示/違反報告)
すめし(プロフ) - めっちゃ面白いです…!個性についての説明がないので、どんな個性なんだ…と読んでいてワクワクします。これからも楽しみにしてます!! (2021年4月17日 2時) (レス) id: 805a88b6fb (このIDを非表示/違反報告)
やおや(プロフ) - ポン酢さん» 貴重なご感想、応援をありがとうございます。嬉しい限りです。最終回をお届け出来るよう精一杯努めますので、今後ともよろしくお願いします。 (2021年2月7日 0時) (レス) id: c63586aa9a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:やおや | 作成日時:2021年2月1日 22時