お友達から始めよう 2

85話　気になるあの子 ページ35

席に着くようにと呼びかける飯田の声が頭に響く。

　ぐらぐらと揺れる視界は目を閉じる前と違い、多くあった空席をクラスメイトが全て埋めていた。
　時計の針もホームルームが始まる直前まで進んでいる。

　少しでも隈が消えているようにと願いながら、Aは目元を擦って眠気を飛ばす。
　何回か瞬きを繰り返していると、教室の扉が開く音が聞こえた。


「おはよう」


　その声で寝惚けていたAの頭は覚醒した。
　声は相澤のものだが、扉の前に立っていたのは見覚えのないミイラ男だ。
　リカバリーガールに怪我を診てもらい、酷い具合だと言われたのだろう。
　相澤は今朝よりも身につけた包帯を増やしていた。

　早すぎる復帰を驚く生徒たち。
　よろめきながら教卓に近づいた相澤は「まだ戦いは終わってねぇ」と不安を煽る。
　まさかまだ敵がいるのか、と怯える様子に対して強い視線で言い放った。


「雄英体育祭が迫ってる」
「クソ学校っぽいの来たあああ！！」


　敵に襲撃された事件から日は浅いが、この状況だからこそ雄英の危機管理体制が磐石だと示す良い機会だ。
　警備は例年の五倍に強化して開催されるとのこと。
　かつてのオリンピックに代わる雄英体育祭は、日本のビックイベントの一つでもあった。

　全国のプロヒーローも欠かさず確認するため、実力をアピールするには他にない好機。
　将来が拓ける貴重な行事でもあり、ヒーローを志すには絶対に外せない。

　相澤が「年に一回、合計三回だけのチャンスを逃すな」と話し終えたところで一限目の予鈴が鳴った。

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