35話 ページ35
相澤と入れ違いに一つの影が階段を上っていく。
小さな体で飾られていない扉をカリカリと爪で引っ掻いて三、四歩下がる。
黒猫は冷たい床に座ると大きく鳴いた。
音を聞きつけたAは再び玄関の扉を開ける。
そこには外の景色が目に映るだけで人の姿は見えない。
だが、順に足元に視線を移すと普段と変わらぬ様子の黒猫がいた。
「おはよう。今日も早起きだね」
快く出迎えたAは猫用のドライフードと、リカバリーガールから貰った菓子を用意した。
食事を終えると黒猫は食後の毛繕いを、Aは食器の片付けに取り掛かる。
それでも尚余った時間を潰すため、使い古された猫じゃらしで黒猫と戯れた。
暫くしてAは身支度を済ませると、戸締りと電気の消し忘れを確認した。
扉の先では相澤が出掛けた時よりも明るく眩しい日差しがアパートの柵を照らしている。
一人と一匹は仲良く住宅街を歩いて車通りの多い道路に出た。
点字ブロックの手前でぺたりと座り込んだ黒猫は短く鳴く。
そして、尻尾を大きく振ると来た道を戻っていった。
Aは後ろ姿が見えなくなるまで見送ろうとしたが、タイミング悪く信号が変わってしまう。
見送ることは渋々諦め、横断歩道を渡った。
幅の広い歩道を進んでいくと、雄英の大きな建物が見え始める。
通りにはランドセルを背負った子供たちや、スーツや作業着を着ている人たちの姿。
間を縫って小走りで慌ただしくバス停に向かう人など様々だ。
すると、前方に見覚えのある後ろ姿が見えた。
雄英高校の制服に黄色のリュックサックと赤いスニーカー。
何より緑色の癖毛は見間違えるはずがない、緑谷出久だ。
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やおや(プロフ) - きゃーぽんさん» ご感想、応援をありがとうございます。お楽しみ頂けるお話をお届けできるよう努めますので、今後もどうぞよろしくお願いします…！ (2021年4月20日 0時) (
レス) id: 889f105f89 (このIDを非表示/違反報告)
きゃーぽん(プロフ) - めっちゃ面白いです！頑張ってください！ (2021年4月5日 16時) (レス) id: 0aee990b2e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やおや | 作成日時：2021年1月29日 2時
