26話 ページ26
リカバリーガールは注意し足りない言葉を飲み込むと、机に向き合って診断内容を記入していく。
その横で邪魔になってしまわないよう、Aは使っていた椅子を壁際に寄せた。
「あ、そうだ。消太さんに怪我の様子を聞かれたら治ったよって伝えてください。私は教室に戻――」
「なんだい！ まだ言ってなかったのかい！？」
突然の大声と机にペンを叩きつけた物音にAは大きく肩を震わせた。
目を丸くしてゆっくりと振り向くと、リカバリーガールは一目見ただけで分かるほど怒りを顕にしていた。
「二週間前に伝えたはずだよ！ イレイザーには個性の反動について話しておけと！ そんなんじゃいつになっても治らないままさね！」
「しょ、消太さんお仕事忙しそうだったから……」
「前にも同じこと言っていただろう！ 毎日会っているというのに！ 時間はたくさんあったんじゃないのかい！？」
「ご、ごめんなさい」
手持ちの杖でぺちぺちと左足を叩かれる。
触れる程度で痛みは少しも感じないが、心配故に随分とお怒りの様子だった。
「伝えようとしたんですけど、その……先に自分の限界を知りたいなって。さすがに隠せないと思ったら私から話すので。だから、まだ内緒でお願いします」
「我儘がバレるのは時間の問題だよ」
「わがまま……そうですね。あと、ヒーローを目指すには覚悟が必要だなぁと思って」
リカバリーガールは諦めたというような溜め息を吐いた。
引き出しから一口サイズのクッキーが入った小袋を取り出してAの制服のポケットに押し込む。
「今回は見逃すけど次はないからね。それから、食べ歩きはお行儀が悪いからしないように。気をつけて帰るんだよ」
伸び伸びと返事をしたAは「ありがとうございました」と部屋を後にする。
制服の両ポケットの菓子は溢れかけていた。
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やおや(プロフ) - きゃーぽんさん» ご感想、応援をありがとうございます。お楽しみ頂けるお話をお届けできるよう努めますので、今後もどうぞよろしくお願いします…！ (2021年4月20日 0時) (
レス) id: 889f105f89 (このIDを非表示/違反報告)
きゃーぽん(プロフ) - めっちゃ面白いです！頑張ってください！ (2021年4月5日 16時) (レス) id: 0aee990b2e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やおや | 作成日時：2021年1月29日 2時
