20話 ページ20
「……あ、引き止めてごめんね」
尋ねる前にすっとその手が離れていく。
立ち止まったままの緑谷とは逆に、Aは保健室に向けて歩み出していた。
「えっ……？」
右手を何度も確認する緑谷の姿をAが気に留めることはなかった。
相澤に個性を消された時のように動揺する緑谷。
それには明確な理由があった。
会話中も常に走っていた人差し指の激痛がピタリと止まったのだ。
痛みを覚悟して指をつつくように触れて、弾いて、反らしてみたり。
一通り試してみたが、顔を顰める程の痛みも軽い痛みすら訪れない。
これは彼女の個性なのだろうか、と緑谷は勢いよく顔を上げる。
前を歩く背を追って声をかけた。
「待って！ 急に指の痛みが消えたんだけど、これって君の個性なの……！？」
そこで漸くAは足を止めた。
きょとんとした顔で振り返ったAと、右手を押さえて目を丸くする緑谷の視線が再び交わる。
「痛そうだったから少しだけでも和らげてあげようと思って。迷惑だった？」
「い、いや！ 迷惑なんかじゃないよっ、ありがとう！ じゃなくて……！ 千歳さんの個性はパワー系だと思ってたんだけど、一体――」
「なんだと思う？」
「わあっ！？」
いつの間にか距離を詰めていたAに緑谷は反射的に自分の顔を手で隠した。
当の本人は「そんなに驚かなくても」と平然と呟いているが、喉から絞り出したか細い声は言葉にはならなかった。
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やおや(プロフ) - きゃーぽんさん» ご感想、応援をありがとうございます。お楽しみ頂けるお話をお届けできるよう努めますので、今後もどうぞよろしくお願いします…！ (2021年4月20日 0時) (
レス) id: 889f105f89 (このIDを非表示/違反報告)
きゃーぽん(プロフ) - めっちゃ面白いです！頑張ってください！ (2021年4月5日 16時) (レス) id: 0aee990b2e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やおや | 作成日時：2021年1月29日 2時
