23話 ページ23
保健室と書かれた札のある扉に向けて二人は声を掛ける。
扉の先で小柄で優しげな雰囲気を纏った老婆が怪我人たちを迎えた。
この雄英高校で看護教論として勤務しているヒーロー、リカバリーガール。
雄英で最も長く勤務しており、希少とされている治癒の個性で重軽傷問わず治療してくれるのだ。
リカバリーガールは緑谷の変色し腫れ上がった人差し指と、一見無傷に見えるAの様子を一目で確認して近くの椅子に座るよう促した。
「さてと。前回より手加減して怪我をした子と、アンタさんは……右手をやったのかい」
「私のは大した怪我じゃないので後で大丈夫です。先に緑谷くんの治療をお願いします」
「え！？ あのっ、僕より千歳さんの治療をお願いします！ 千歳さんの個性のおかげで――」
今は痛みが無くなっているので。
そう続けて話そうとした緑谷の声が消えた。
同時に唇を噛んで左手をぐっと掴む。
緑谷はボール投げを終えた時の鈍い痛みに再び襲われていた。
口をぱくぱくと動かすが、あまりの痛みに小さな唸り声すらならない。
やがて、痛みに苦しみながら椅子の上で背中を丸くした。
原因はAにあった。
指の痛みを止めていた力をやめて、口封じのために使ったのだ。
涙目になりながら痛みを耐え抜く姿を横目に、Aは申し訳なさそうに個性を解いた。
「……この様子なので、緑谷くんの治療を先にお願いします」
「事情はよーくわかったよ。ほら、体こっち向けな」
治療道具を取り出すことなく近付いたリカバリーガールは、唇をムッと突き出す。
勢いよく伸びたそれは緑谷の腕に吸い付いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 135人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
やおや(プロフ) - きゃーぽんさん» ご感想、応援をありがとうございます。お楽しみ頂けるお話をお届けできるよう努めますので、今後もどうぞよろしくお願いします…！ (2021年4月20日 0時) (
レス) id: 889f105f89 (このIDを非表示/違反報告)
きゃーぽん(プロフ) - めっちゃ面白いです！頑張ってください！ (2021年4月5日 16時) (レス) id: 0aee990b2e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：やおや | 作成日時：2021年1月29日 2時
