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言葉が出なかった。
「A、千影。動け」
立ち尽くしてしまった。
「おい」
目の前には動きもしない人の形をした何か。
悲しく、辛い現実だった。
どれだけ武術を極めていようが、知識を得ていようが、息をしていないそれに為す術はない。
ただただ手を合わせて、そう至った経緯を探すだけだ。
「まずは」
しゃがみ込んで痕跡を追う。
千影と土方達から指導を受けながら進めていく。
だんだんと当時の情景が浮かび上がってくる。
(あっ)
悲しい顔をしたそれは袋をかけられ、運ばれていく。
その場で小さく目を瞑り、頭を下げる。
視線を戻せば、土方がこちらを見ていた。
「…次第に慣れてくる」
そうぼそりと呟いて、手を進めていく。
単純な事故だった。
誤操作による他車との衝突事故。
バイクに乗っていた被害者は小さな身体を、その大きな車体に身体をぶつけていた。
「お疲れさん」
土方達にぽんと肩を叩かれるも、消失感でいっぱいだった。
業務を終え、自室へと戻る。
いつもなら千影と二人で、今日は疲れただの、肩揉んでだのくだらない会話ばかりだが、言葉一つない。
まだ外からは談笑する声が聞こえる時間だというのに、電気を消し布団に潜っていた。
かちかち、と時計の音が部屋に響く。
空気があまりにも重すぎた。
「A。起きてる？」
「うん、起きてるよ」
「私さ、お葬式で人の生死を見たことがあったけど…あの感じは初めてで…なんか…怖いと思っちゃった」
これが仕事なのにね、と千影は乾いた笑いをあげた。
葬式で見る姿とは違う、人の逝く顔。
棺には綺麗に化粧を施され、家族に愛されたというような朗らかな表情で、今日の被害者とは正反対にいた。
(きっとあの人も家族や友達がいて、楽しく暮らしていたはずなのに。
それなのに。突然)
ぽっかりと胸の真ん中が空いたような感覚。
勝手にぽろぽろと涙が落ちていく。
「土方さんは慣れるって言ったけど、慣れるのかな」
「慣れる…のかもしれないけど、本当は慣れちゃいけないと思う。
私達には何百件の事故現場の一人だけど、亡くなった人にとっては一瞬で、一度きりだったんだから」
初めて無くなった命と向き合い、真選組で勤めていくことの難しさと大変さにほんの少しだけ触れた気がして、
「…明日に備えよう、千影」
無理矢理に熱くなった目を閉じた。
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Nattu(プロフ) - 早桃さん» 初めまして‼︎ｺﾒ嬉しいです〜ありがとうございます;;ゆったりまったり続けていきますのでお付き合いいただけたらと思います。最高と言っていただき凄く嬉しかったです;;; (2022年4月5日 23時) (
レス) id: 8022db4695 (このIDを非表示/違反報告)
早桃 - 最高です、、、！本当に面白くて、土方さんとこれからの進展が楽しみです。いつまでも応援しています😌 (2022年4月2日 12時) (レス) @page30 id: 636f4996a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Nattu | 作成日時：2022年2月15日 22時
