十七 ページ17
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「ここに来てよかったです」
女はへらへらと笑いながら、幸せそうに言う。
瓶いっぱいに入っていた酒は半分を切っている。
月の位置はもうだいぶ西側に動いていた。
「お前の故郷はそんなに悲惨だったのか」
そう尋ねると、首を横に振る。
そのまま胸元に手をやり、一枚の写真を手渡してきた。
そこには、老若男女問わない笑顔で並ぶ人々。
その中に、Aはいた。
「家族、多いんだな」
「過疎地あるあるですよね。私がその中の長女って訳です」
Aの周りを囲む少年少女達。
彼らの表情を見る限り、彼女をとても慕っているのがよく分かる。
今とは違う、肩まである髪をしたAは優しく笑っていた。
「しっかりした姉貴だったんだな」
「そんなはず訳ないじゃないですか。私が出来損ないなの、土方さんがよく知ってるでしょう」
Aはけらけらと笑う。
ここにきてからの表情とは違う。
写真にいる自然体の彼女と同じ顔だ。
(普段からそんな顔をすれば、注目の的だろうに)
瞼のきらきらとした光が、月明かりでさらに輝かせる。
頬紅なんて意味も成していない紅い頬が、Aを幼くさせていた。
「うち、農家なんです。でもこんだけ家族いたら、なかなか高いものを頻繁に買える訳じゃないですし、子ども分の教育費だって馬鹿になりませんから」
「つまり、出稼ぎに、ここに」
「あんまり良くない言い方するとそうなりますね」
不純な動機ですみません、と女は頭を下げた。
「…いいんじゃないか。家族思いなのはいいことだ」
つい、らしくない言葉が漏れて、誤魔化しついでに酒を舐めた。
Aは何も気にせず、にこにことしたままだ。
「結果…お前達が来て、役立ってる訳で。
感謝してる」
酒は自身の制御を緩くする。
ぺらぺらと、『副長』らしくない言葉が並んでいく。
笑っていたAも、ふいに真剣な顔つきになった。
「急に言われると、なんだか照れちゃいますね」
「…調子乗んじゃねえぞ」
「はあい。分かってます」
そして、またへらりと笑う。
そのまま酒を一口して、
「やっと『土方さん』とお話しできて嬉しいです」
Aは眉を下げた。
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Nattu(プロフ) - 早桃さん» 初めまして‼︎ｺﾒ嬉しいです〜ありがとうございます;;ゆったりまったり続けていきますのでお付き合いいただけたらと思います。最高と言っていただき凄く嬉しかったです;;; (2022年4月5日 23時) (
レス) id: 8022db4695 (このIDを非表示/違反報告)
早桃 - 最高です、、、！本当に面白くて、土方さんとこれからの進展が楽しみです。いつまでも応援しています😌 (2022年4月2日 12時) (レス) @page30 id: 636f4996a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Nattu | 作成日時：2022年2月15日 22時
