◇ 39. [7/3] ページ39
保健室に運んでくれる間、大野くんもわたしも、何も話さなかった。
何を話したらいいのかわからなかった。
きっと大野くんもそうだっんだと思う。
保健室に入ってきた私たちを見て、相葉先生は驚いた顔をした。
「どうしたの？」
「足、痛めたみたい」
わたしの代わりに大野くんが説明してくれる。
座りな？って先生が椅子を引いてくれて、そこに大野くんが降ろしてくれた。
「無理しちゃだめだって言ったのに」
「……さっきまでは平気だったんですけど…」
「座っててね、氷水用意するから」
先生がビニール袋に氷と水を入れてくれてる。
大野くんもそれを手伝うように、先生のそばにくっついてる。
「ちゃんと治さないと、癖になっちゃうよ」
「はぁい……」
「今日はもうでちゃダメ」
ですよね。
ああ今頃、別の子が代理で出てくれてるんだろうな。
先生が氷水の入ったビニール袋をわたしの足首に当ててくれる。冷たいけど我慢ね、って言われた。
「にしても驚いたな」
「え？」
「大ちゃん、背は小さいけど力はあったでしょ」
ニッコリと先生が笑う。
大野くんが慣れた手つきで冷蔵庫からポカリを取り出しながら、「小さくて悪かったな」と先生を睨んだ。
「あ、そうだ。俺ちょっと体育館に行ってきてもいい？」
先生が、突然立ち上がる。
「テーピング用のテープ、保健委員の奴らが向こうに持ってってたんだ」
「え？」
「大ちゃん、代わりに、冷やしてあげててよ」
「………」
ニコニコ顔の先生に、
「……別にいいけど」
大野くんの口がとんがる。
「あ、わたし、自分で冷やせます！」
「いいからいいから、大ちゃん、頼んだよ」
慌てるわたしをよそに、先生は大野くんに氷水を渡して、保健室から出て行った。
「………」
「………ごめ、ん」
小さく謝ったわたしを、チラリと大野くんが見て、なぜか不満そうに唇を尖らせた。
「え？」
「……なんか、気ぃ遣いすぎ」
「……そう？」
「………」
「………」
会話が途切れて、大野くんがわたしの足首を台に置き直す。そして痛めた足首を、労るようにするりと撫でた。
「………」
足首に当てられた冷たい氷水が、火照る身体の熱までも冷ましてく。
「……Aちゃん」
ドキン。心臓が跳ねて、「なに？」って返事が裏返りそうだった。
「ずっと、言えてなかった」
「え？」
「弁当のお礼」
もう終わってしまった2人だけのジカン。
思い出して、胸が、きゅううって、いたい。
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ヤノ(プロフ) - 。さん» ありがとうございます、恐縮です…私には勿体無いコメント…！そう言っていただけただけで、書いた価値がありました(´;ω;`)感謝です。 (2016年7月6日 19時) (
レス) id: bcc3fbaed6 (このIDを非表示/違反報告)
ヤノ(プロフ) - なったんさん» ありがとうございました(´;ω;`)！相葉先生の存在は物語的にも本当に大きかったです…！本当は大好きなのに照れて素直になれない智(-_-)（笑）亀更新にも関わらず、見捨てずに見に来ていただいて本当に感謝です、いつもありがとう！！ (2016年7月6日 19時) (レス) id: bcc3fbaed6 (このIDを非表示/違反報告)
ヤノ(プロフ) - 煌さん» 無事に完結できました（涙）そう言ってもらえて本当に本当に励みです…！こちらこそ、見届けてくださって本当にありがとうございました！いつも温かいコメント感謝です(´;ω;`) (2016年7月6日 19時) (レス) id: bcc3fbaed6 (このIDを非表示/違反報告)
ヤノ(プロフ) - きゃんでぃぶるーさん» ありがとうございます…！不器用ながらも何とかくっつけた2人でした（笑）次はどんなの書こうかなーと悩み中です(*'v`*)またぜひ遊びにきてください！コメントありがとうございました(´;ω;`) (2016年7月6日 19時) (レス) id: bcc3fbaed6 (このIDを非表示/違反報告)
ヤノ(プロフ) - 麻衣さん» 最後まで見届けてくださってりありがとうございました…！結末を皆様が受け止めてくれるか不安でしたが、すぐに麻衣さんからコメントが届きホッとしました(´;ω;`)またぜひ遊びにきてください！ (2016年7月6日 19時) (レス) id: bcc3fbaed6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ヤノ | 作成日時：2015年9月4日 0時
