◇ 29. ページ29
「……おう、何してんのこんなとこで」
サツキちゃんに問いかける大野くんの笑顔。
どこかぎこちない。
「……やっぱり、そうだったんだ」
サツキちゃんの静かな声。
……やっぱり？
「最近、昼休みになると嬉しそうに教室から出て行くから、そうじゃないかと思ってた」
「…………」
「……やっぱりその人と一緒だったんだ」
……「その人」はわたしのこと。
軽蔑するような冷たい目で、わたしを見た。
「……智、この人のこと好きなの？」
ひと気のない静かな廊下。
心臓が大きく跳ねた。
「……… 何、急に…」
動揺してるのか、大野くんの声が詰まる。
その様子をまた冷たい目で見ながら、サツキちゃんが言う。
「……この人、ほのかにそっくり」
「………」
「……智、この人にほのかを重ねてるの？」
わたしが
知りたくて知りたくて、だけどどうしても聞けなかった質問を
サツキちゃんがいとも簡単に大野くんに投げかけた。
「………」
「……そんなんじゃ、…」
否定しようとした大野くんの声。
言い切る前にその声は途切れる。
「この人、ほのかのこと利用してるよ」
冷たい目。
募った想いが、ぐらぐらと揺れて、不安定になってく。
「わたしがこの人にほのかのこと教えてあげたの」
「………」
「智と知り合いだって言うから、怪しいと思ってたんだ」
ああ、やっぱり。
全部間違ってたのかもしれない。
「近付きたかったんでしょ？智に」
「………」
「智の過去を利用して、弱さにつけこんで、自分だけ特別扱いされてるって、浮かれてるんでしょ？」
「………ちが」
「ほのかを見くびらないでよ！」
間違ってた。
好きになったことも、力になりたいと思ったことも、好きと伝えたいって思ったことも。
感情を失ったように立ち竦む大野くんの肩を、サツキちゃんが掴む。
「ほのかは！智が大好きだったんだよ！？だけど自分が死ぬこと分かってたから、言えなかったのに！」
「………」
「忘れるなんて、早すぎるよ……！」
大野くんが、「あの頃」に、舞い戻ってく。
サツキちゃんの涙声は、とても響いた。
わたしにも、きっと大野くんにも。
曖昧に一緒に過ごしたこの2週間は、全部夢なんじゃないかと思った。
ほのかちゃんの代わりでもいいなんて思えない、と言ったけど、
だったら大野くんの傍に居ることすら、わたし自身が許しちゃいけなかったんだ。
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ヤノ(プロフ) - 。さん» ありがとうございます、恐縮です…私には勿体無いコメント…！そう言っていただけただけで、書いた価値がありました(´;ω;`)感謝です。 (2016年7月6日 19時) (
レス) id: bcc3fbaed6 (このIDを非表示/違反報告)
ヤノ(プロフ) - なったんさん» ありがとうございました(´;ω;`)！相葉先生の存在は物語的にも本当に大きかったです…！本当は大好きなのに照れて素直になれない智(-_-)（笑）亀更新にも関わらず、見捨てずに見に来ていただいて本当に感謝です、いつもありがとう！！ (2016年7月6日 19時) (レス) id: bcc3fbaed6 (このIDを非表示/違反報告)
ヤノ(プロフ) - 煌さん» 無事に完結できました（涙）そう言ってもらえて本当に本当に励みです…！こちらこそ、見届けてくださって本当にありがとうございました！いつも温かいコメント感謝です(´;ω;`) (2016年7月6日 19時) (レス) id: bcc3fbaed6 (このIDを非表示/違反報告)
ヤノ(プロフ) - きゃんでぃぶるーさん» ありがとうございます…！不器用ながらも何とかくっつけた2人でした（笑）次はどんなの書こうかなーと悩み中です(*'v`*)またぜひ遊びにきてください！コメントありがとうございました(´;ω;`) (2016年7月6日 19時) (レス) id: bcc3fbaed6 (このIDを非表示/違反報告)
ヤノ(プロフ) - 麻衣さん» 最後まで見届けてくださってりありがとうございました…！結末を皆様が受け止めてくれるか不安でしたが、すぐに麻衣さんからコメントが届きホッとしました(´;ω;`)またぜひ遊びにきてください！ (2016年7月6日 19時) (レス) id: bcc3fbaed6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ヤノ | 作成日時：2015年9月4日 0時
