冷酷悪魔と筆談少年

恐怖の化身 ページ25

リンリンリン！

「姉貴起きてくだせぇ！」

「あ？」

ベルの音とスカルの喧しい声で目が覚めた

「何事だ…」

「見た方が早いでやすよほら！」

促されるまま影のなかから外の様子を見る

「な…」

目に写ったのは矮小なる餓鬼共の姿
どうやら石をアルトに投げているらしくその顔は愉悦に満ちていた

「オラ！」

「真っ白お化けは村から出てけー！」

「やーいやーい！親無しアルト！」

「目が赤いなんて変なのー！」

その口から紡がれる言葉は何とも幼稚でヘドが出た
アルトも石を投げられ白い肌からは流血している
さらに傘もなしに日光にさらされているのもありかなり弱っている
その中で、必死にベルをならしているのだ

「ど、どうしやしょう…！」

スカルがわたわたと慌てている

(そんなの答えは一つしかない 。)

「私ならともかく他の奴等が危害を加えるならば契約者として放っておけないだろ…少し灸を据えてやる…」

ルシアはゆっくりと影から姿を表す
しかしそれはいつもの白い姿ではない
影のように全身真っ黒
形さえもとらえることができない禍々しいオーラを放つ影は青い瞳を揺らめかせながら大きくなっていく
それは大人の身長すら裕に越え、その恐ろしさは計り知れない

子供たちは目を見開いた
先程まで弱者と罵り虐めていた相手の影から出てきたその存在に震えずにはいられない
歯は噛み合わずガチガチと震え、自然と涙が頬を伝う
その場から動くこともできず子供たちは愕然とする他なかった

「矮小なる餓鬼風情が…さっさと立ち去れ！」

「あ…あ…うわぁぁぁぁぁ！」

殺気、威圧、覇気
その全てがあわさった声と瞳に子供たちは時が動き出したかのごとく一斉にその場から逃げ出した
中には失禁している者もいて実に滑稽なその無様さにルシアはクスクスと笑った

「馬鹿め。この程度で逃げ出すなど何とも愚かで腑抜けた奴等だ。」

姿をもとに戻し、アルトを抱き上げる
影になるように近くの木陰にアルトを移す

「大丈夫か？ったくこんなに傷をつけて…」

やれやれといった感じで持っていた秘薬をアルトに飲ませる
傷はたちまちなおった
正直使うには贅沢とも思ったが手持ちがこれしかない以上仕方がない
背に腹は変えられぬと言うやつだ

『ありがとうルシア。すごいや！』

さっきとはうってかわってそう笑うアルトをルシアは鼻で笑った

「はっ！当たり前だ。私を誰だと思ってる。魔界の支配者ルシアだぞ。この程度造作もないわ！」

と、そこでまた自分が絆されていることに気付き木に頭を打ち付けるルシアだった

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