蛇竜は番犬に恋をする3

第九十七魔（アスモデウスside） ページ6

「ごめ……なさい……ごめんな……さい……」

とてもとてもか細い声
震えて怯えて縮こまっている様だ
私はたまらず扉まで駆け寄って覗いた
薄暗い部屋の中には可哀想な程にガクガク震える影が一つ
普段の孤高で決して揺るがぬ鉄仮面の姿はどこへやら
そこにいたのは目に大粒の涙を浮かべて震える少女だった

(ハドラ……！)

あんなハドラは見た事がない
目を見開いて動けなくなってしまう程に
痛々しかった

「メイメイ……！どうし……」

話しかけようとしたウァラクだったが、咄嗟に口をカルエゴ卿が抑えた

「しっ！まだ気付け薬が効いて間もない。今話しかけたらまた発狂しだす可能性がある。今は放っておくんだ。」

「そんな！エギーせっ……」

「ウァラク。カルエゴ卿の言う事をきけ。わかるだろ？」

「う……うぅ……！」

私もウァラクを牽制すればウァラクは涙目になりながらもその場から逃げ出した
……きつく言い過ぎただろうか
だが今のハドラの状態を考えればそれが最善なのは間違いないのだ
とは言え少し酷い事をしたと思ったので後で慰めるとして、今のハドラはとても会話が出来るとは思えん
今私達は結構近い所で会話していた
それが聞こえないとなれば相当だ

(一体何があったと……)

「貴様も今日はもう休め。明日の催し物もあるだろう……ハドラは我々教師に任せろ。まぁ、今回の事件はあいつも関わっている可能性がある。あの爆発物から多量の毒素が検出された。正常になり次第事情聴取を……」

「っ……！」

ハドラの気持ちが少し、分かった
何故あの時胸ぐらを掴む程怒ったのか
ハドラはキリヲ先輩を尊敬していた
恋愛とは言わずとも好意を寄せていた
そんな相手を蔑ろにされ、さらに犯人呼ばわりすれば怒るのも無理はない
現に私は怒っているのだから

「貴方はハドラの事を疑うのですか？だとしたらその目も鼻も腐りきってるとしか言いようがないな……」

「……何だと？」

ピリッとした空気が場を戦慄とさせる
だが私はめげない

「ハドラは貴方を尊敬しています。それが意味ある好意かはわかりませんが、少なからず貴方を特別に思っている。そんな彼女が学校を破壊する様な事を進んでやるとでも？学校はバリアで阻まれ逃げる事もできない。貴方がいるこの学校を故意に破壊するとでも……！？」

私はガッと胸ぐらを掴んでしまった

「ナベリウスともあろうお方が恥を知れ！鼻に蜜でも塗られたか！」

「っ……！」

「貴方も教師ならば！自分の受け持つ生徒の事を信用するべきではないのですか！」

カルエゴ卿は何も言わなかった
ただ、悔し気に口許を歪めた

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