近くて遠い、そんな恋【Part1】

色褪せる ページ34

アナタとともに過ごした

時間、記憶、会話、表情、声、

それは全部、過去の物。

すべて持ってくると倒れちゃうから、

半分持って、半分捨てて。

その繰り返しで

今の私。


多分私は

捨てちゃ駄目なもの、捨てちゃったんだろうね。

何故か。

何故か一番大好きで、愛してた、はずの

貴方のことが

今となっては何一つ

覚えていない。

思い出したいのに、忘れたくないのに、

もっと見たいのに、聴きたいのに、振り返りたいのに、過ごしたいのに、

全部過去に持っていかれるの。


そのたび私は涙を流す。

こんな色褪せた世界、

目をふさぎたい。耳をふさぎたい。時間をとめたいくらい。

そんな大嫌いなセピアの世界に


突然色彩があふれた。

何かが動き出した。アナタかなって想ったの。

でも違った。

別の人。


でも何処か、懐かしいの。

アナタじゃないけど、素敵な人。

もし、もしかしたら

この人となら

世界が変わるかもしれない

期待するだけ自由だよね？


私はその人の手を引いて

嫌いな世界を飛び出した。

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