5 ページ5
*
『中島さん大好き、俺のものになって』
そんな言葉を酔った俺は簡単に口にしてしまうのか。酔った自分の可能性に感動する。もちろん、悪い意味で。
「トーストしかないけど…それでいい？」
「はい…」
起き上がった俺たちはリビングへ向かう。
言い忘れたが、ここは中島さんの家だ。
言わずもがな、寝室もリビングも綺麗で、整頓されている。
キッチンで俺の為にトーストを焼き、ホットコーヒーを入れてくれている姿を、座らせてもらったソファから眺める。
ワックスで固められていない髪の毛に、ちょっとだけ寝癖があるのが可愛い。見慣れない部屋着姿も、すごく似合っててかっこいい。
「そんなに見詰められたらやりにくいよ？」
からかうように笑いながら言われて、慌てて目を逸らした。
「電車でも、そうやって俺のことずーっと見てるでしょ？」
「いつから…気付いてたんですか」
「ずっとだよ、最初っから。」
「っ…さい、しょ、、」
「山田くんがあの時間のあの電車に初めて乗ったとき、まだまだ学生感抜け切れてなかったし、あのスーツに着られてる感じが面白くてさ。俺も気になってたわけよ」
それは去年のこと。
社会人1年目の俺は、電車に乗るあの最寄りの駅へ引っ越してきた。
中島さんの存在に気が付いて、見詰めてしまうようになったのは、本当にその時。最初からだった。
「それにこんなに可愛い顔してるし、最初は女の子かと思ったけど、男の子だからビックリしたよ。」
「かわ、いい…」
「その頃から山田くんのこと可愛いって思ってたよ？」
焼けたトーストと温かいホットコーヒーを持って俺の元へ来た中島さん。それをテーブルに置いて、俺の隣へ腰を下ろす。
「で、どうする？」
「、へ？」
「これから、どうしよっか、俺たち」
「ど、どうって……、」
「もう、分かってるでしょ？俺のこと、自分のものにしたいんでしょ？」
腿の上でぎゅっと拳を握りしめていたのに気付いて、中島さんはその上から大きな手を重ねてくる。
唾を飲む。
もう、本格的に戻れない、これは。
「俺と、付き合ってください。
まぁ、返事は、イエスしか受け取らないけどね？」
ニヤリと笑った中島さんのその瞳に吸い込まれていく。目は逸らせない。
当たり前だ。俺だって、イエス以外の言葉なんて、用意していないよ。中島さん。
Fin.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 257人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
もも(プロフ) - もう何度読んだかわかんないくらい読みましたけど、アタシも噂のふたりを観察したいし会話を盗み聞きしたい〜！！！どのゆとやまちゃんも最高に可愛かったです (2019年12月12日 10時) (
レス) id: 1da0e85042 (このIDを非表示/違反報告)
りょうぱち(プロフ) - あいさん» ありがとうございます〜！陽キャな2人を書けて良かったです！ (2019年9月29日 22時) (レス) id: 73438a5746 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - 陽キャゆとやま最高です！！りょうぱちさんのゆとやま大好きです！ (2019年9月29日 12時) (レス) id: e3aa8eb60d (このIDを非表示/違反報告)
りょうぱち(プロフ) - 山受け信者さん» こちらこそ、リクエストありがとうございます！ (2019年2月16日 17時) (レス) id: 73438a5746 (このIDを非表示/違反報告)
りょうぱち(プロフ) - 山受け信者さん» コメントありがとうございます^^*リクエストなさってくれるなら是非とも書かせていただきます！ちょうど次のお話何にしようか悩んでいたところなので…！笑 いつもありがとうございます^^* (2019年1月19日 23時) (レス) id: 9cecffa59a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：りょうぱち | 作成日時：2018年12月21日 19時
