重力、夢中力…弐｡【中原中也】

(49)狙われてる ページ8

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「太宰の奴め…また仕事をサボりおって…！」


武装探偵社の事務所で社員の国木田独歩が怒りを隠そうともしないまま呟いた。

瞬間、扉が開き今正に名を口にした人物が入ってきた。



「太宰貴様ぁ！仕事を放り出して何を……?!」



何時もの様に怒鳴った国木田が目を丸くした。
無論、太宰の横に片手で必死に目を抑える少女を見つけたからである。



「おや？随分小さな娘(こ)を連れてきたねェ。まさか誘拐じゃあないだろうね」


「冗談は止してくださいよ与謝野先生。この子を診てくれないかい？」


「何だい、何処か悪いのかい？」


「ちょっとね」


はぐらかす太宰を不思議そうに見つめた与謝野だが、それ以上は何も言わず医務室へと入って行った。



「太宰…説明しろ」


「敵の襲撃に巻き込まれた女の子だよ」


国木田の問に太宰が短く答えた。




「敵の襲撃？」


「そ。何、一寸したくだらない怨恨さ」


「説明が足りないよね」


駄菓子の散乱したデスクから顔を上げた乱歩が言った。其の目元には眼鏡がかけられていた。



「どういう事です？」


「其の侭の意味だけど。襲撃を受けたのは太宰、君じゃないだろう」


乱歩は続けた。



「君への怨恨なら敵は当然君を狙う。よっぽど下手な奴じゃないと太宰への弾丸を少女に外すなんて無い筈だ」


「それはそうですね」


「それから彼女は…「診終えたよ」



与謝野がAの手を引き乍医務室から出てきた。
Aは相変わらず目を抑えている。



「可笑しなクスリを打たれてるね。この子、本当は何歳(いくつ)だい？」


「20歳ですよ」

「はっ?!」



国木田が驚きに目を見開く。







「全部乱歩さんの言う通りだ。彼女は狙われてる」





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