(番外編)最下級の男について ページ6
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とある墓地で月光が人影を地へ映していた。
仕事上がりのスーツ姿に無造作に下ろされた髪。
手にはハンドバッグと、『新訳:剪灯新話』と書かれた文庫本がある。
その女_____AAは、何を語るわけでもなく一つの墓石の前に立ち、その主の名を見つめていた。
其処へ手向けられた新しい花束からあの憎たらしい元同僚も近い内に来たことを彼女は察した。
最下級構成員であった男とAの間には親しい関係などある方が異例で、会話をしたのは唯の一度きりだった。
………
『其処で何をしているんですか』
「猫を拾ったんだ。…アンタは…」
『AAです』
「嗚呼、アンタがあの」
『あの、?』
「友人と飲んでいると、其奴の口から時々名前が出るんだ」
『…愚痴ですか』
「いや違う。だが内容は友人の為に秘密にしておく」
『そうですか』
………
マフィアが猫を拾った場面に遭遇したことなんて生まれて此の方無かった。
だから一度きりの会話で特別な印象を持った。
紅の髪が特徴的な無精髭を生やした顔が今も脳裏に浮かぶ。
その男と会ってから少しして、"ミミック"という組織との抗争で最下級構成員が敵の首領と相討ちになったらしいとの情報を中也から聞いた。
最下級構成員が相討ちとは云えど敵の首領を倒したとは大した奴が居るんだな、くらいにしか当時は思っていなかった。
最も当時のAは、"黒社会最悪と称された二人と時々一緒に任務をこなすだけ"の小娘だったわけで、組織の細々とした事まで(今と比べると)知る事はできなかった。
猫を拾った男と会うことは二度と無かった。
Aが事実を知ったのは太宰が組織から行方を眩ませてからだ。
『…あの時云っていた友人とやらが太宰なら、矢っ張り愚痴じゃないですか』
『あと一度でいいから、貴方と話がしたかった』
………
『その猫、どうするんです?』
「知り合いの所へ連れて行ってみるよ。子どもたちが喜ぶかもしれない」
『…貴方、何故マフィアに居るんですか』
「…?それを言うならアンタもだろ?」
『此処で見てきた誰よりも優しい目をしてます』
「俺にそんな風に話し掛けてきたのはアンタ以外に1人しか居ない」
………
『彼の時名を聞き忘れたのを少し後悔しています。もっと早く知っておけば良かった』
Aは花束の横に一輪の花を置いて、墓石に背を向けた。
***
アニメ黒の時代…小説以上に号泣でした…
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ヤマダノオロチ(プロフ) - Yuukiさん» ありがとうございます!やっと構想がまとまってきました。これからもよろしくお願い致します! (2017年2月18日 23時) (レス) id: b2832ff97e (このIDを非表示/違反報告)
Yuuki(プロフ) - とても面白かったです!スランプで大変だと思いますが、これからも頑張ってください!応援してます!! (2017年2月18日 23時) (レス) id: 3720d37733 (このIDを非表示/違反報告)
ヤマダノオロチ(プロフ) - 天さんさん» コメントありがとうございます!上から目線だなんてそんな事無いですよ!?お褒めに預かり光栄です(>_<)最近はラブソングばっか聴いてて、主と中也くっつけたい〜とか考えてます(笑)これからも頑張ります! (2017年2月14日 20時) (レス) id: b2832ff97e (このIDを非表示/違反報告)
天さん - う、上から目線で失礼しましたぁああッ!! (2017年2月14日 19時) (レス) id: 6b9cd4fe2d (このIDを非表示/違反報告)
天さん - スランプ大変ですよね…文章とか読みやすくて好きです!頑張ってください(*´ω`*)ちなみに、私はスランプの時は曲を聞いてます。曲聞いてるとネタがポンポン出てきますので…!これからも応援してます(´˘`*) (2017年2月14日 19時) (レス) id: 6b9cd4fe2d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ヤマダノオロチ | 作成日時:2016年9月4日 20時