(番外編)Thank you for your! ページ21
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拠点を出たAが次に向かった先は普段なら有り得ない場所だった。
A自身出来れば近付きたくないのだが、カップケエキも借りも出来てしまったのだから仕方が無い。
階段を上がって【武装探偵社】と書かれた扉の前に人数分のカップケエキを入れた紙袋と手書きのメッセージを残し、踵を返した。
社員に見つかる前に早く帰ろう。
と思ったが、其の希望は早々に砕かれる。
「何してるんだい、此ンな所で」
『っ!……報酬を、払いに来た』
「そう、ならさっさと帰り給え」
『…云われなくても帰るさ』
自分の横を通り過ぎていくA。
其の細い腕を太宰が引いた。
『、何だ…ぁ!?』
「………」
フワッと香る自分のものではない香り。
暗くなった視界。肩と背に感じる腕の感触。
何が起きたのか判断はついたが、何故かAは動けなかった。
『お、お前、何を…』
「此ンなに隙だらけな奴が幹部の補佐役だなんて、マフィアも人員不足なの?」
『ざけんな!女の敵!』
顔を真っ赤に染めて早足で去って行くAを見て、太宰は満足気に目を細めた。
「ん?何コレ」
太宰の後ろから現れた乱歩が紙袋と手紙に気付いた。両手一杯の駄菓子を零しそうにしながら袋の中を覗いた。
「わ、カップケエキだ!」
嬉々としてオフィスに入っていく乱歩が気付きもせずに置いていった1枚の紙を拾い上げ、太宰も中へ入っていった。
"探偵社一同様へ ありがとうございました"
Aが最後に向かったのは矢張り彼の男の家だった。
インターホンを鳴らすと、家主は部屋着の侭出てきた。
「休日の昼間に何の用だ手前」
『時差ボケでブッ倒れた幹部様を労ってやろうと思って』
「誰がブッ倒れたよ誰が」
Aを睨む中也。
だがAは其ンなの痛くも痒くもない様で、最後の1つになった袋を差し出した。
其れを見た中也は絶句したが、浅い溜息を吐くと、後頭部をガシガシ掻きながら受け取った。
「おい、何帰ろうとしてやがる」
『…は?』
「…一緒に食おうぜ。折角2つあんだからよ」
今度はAが絶句する番だった。
然し、直ぐにフッと笑いを零すとまた口を開く。
『部屋着だとカッコつくものもカッコつかないね』
「あ"?手前ドアに挟むぞ」
『スウェット姿ウケww…と』
「あっ、手前、何勝手に撮ってンだ!!」
近くの電線で雀が「チュン」と短く鳴いた。
fin.
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ヤマダノオロチ(プロフ) - Yuukiさん» ありがとうございます!やっと構想がまとまってきました。これからもよろしくお願い致します! (2017年2月18日 23時) (レス) id: b2832ff97e (このIDを非表示/違反報告)
Yuuki(プロフ) - とても面白かったです!スランプで大変だと思いますが、これからも頑張ってください!応援してます!! (2017年2月18日 23時) (レス) id: 3720d37733 (このIDを非表示/違反報告)
ヤマダノオロチ(プロフ) - 天さんさん» コメントありがとうございます!上から目線だなんてそんな事無いですよ!?お褒めに預かり光栄です(>_<)最近はラブソングばっか聴いてて、主と中也くっつけたい〜とか考えてます(笑)これからも頑張ります! (2017年2月14日 20時) (レス) id: b2832ff97e (このIDを非表示/違反報告)
天さん - う、上から目線で失礼しましたぁああッ!! (2017年2月14日 19時) (レス) id: 6b9cd4fe2d (このIDを非表示/違反報告)
天さん - スランプ大変ですよね…文章とか読みやすくて好きです!頑張ってください(*´ω`*)ちなみに、私はスランプの時は曲を聞いてます。曲聞いてるとネタがポンポン出てきますので…!これからも応援してます(´˘`*) (2017年2月14日 19時) (レス) id: 6b9cd4fe2d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ヤマダノオロチ | 作成日時:2016年9月4日 20時