(57)決着 ページ16
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重い扉を開けば其処には女が蹲っていた。
ゆっくり近付き、その背に手を触れる。
何時しかこんな事があったな…と
「…顔を上げて、麗しい人」
声を聞くや否や、夫人はハッとしたように此方を振り返る。
「あ…なた、は…」
「お久しぶりですね」
「あ…あぁ…」
縋るように抱き着いてくる彼女。
本当はこんな事望んじゃあいないが、状況が状況だ。致し方ない。
「……"愛しているよ"」
「…え……」
ん?と微笑みを向けた夫人の顔は赤らんでいる。
違う、お前じゃない。
ガン、と乱暴に再び扉の開く音。
『其の
「!…アンタ…」
Aを見るなり腰に手を当てる夫人。
「…無い?」
確かに仕舞ったはずのピストルが見つからない。
それもその筈だ。
「イケナイね、女性がこんな物騒な物持ってちゃあ」
「っ返して!私は彼の女に復讐しなくちゃいけないの!あの小娘に…!!!」
『もう充分でしょ…君のせいで疲れたよ』
安全用の柵の上に乗り、夫人を見つめるA。
其の儘器用にしゃがむと、膝の上に頬杖をついた。
其の視線は一度夫人から外れ、太宰に向けられる。
太宰の腕はしっかりと夫人の肩を抱いていた。
『早く終わらせても良いけど…折角だから動機の1つや2つ聞いておこうか?』
「動機…?其ンなの、云わなくても判るでしょう。貴女が悪いのよ…全部!貴女のせいで…私は…」
『旦那殺された直後に別の男に惚れて?其の男と私が一緒に居たから悪いの?抑々私の上司に喧嘩売ったのは君の旦那だけどね』
挑発的な口調に顔を歪ませ、夫人は言い放った。
「貴女に私の苦しみは判らないわ!親に燃やされかけた過去を一生夢に見ればいい!そしてまた貴女は独りぼっちよ!なんて良い気味!!!」
私の腕の中でそう喚く夫人に初めて同情の念を持った。もう、彼女は今後、綺麗な世界を見る事を許されないだろう。
『手前の苦しみなんざ知らねぇよ…だから手前も私の苦しみなんて判らないだろ?』
ゆっくりと視線が交じった。
『一生夢に見せてやるよ、私の"苦しみ"』
________異能力『無我夢中』
その言葉を皮切りに、私は手を放す。
「何、コレ…炎が…っ、厭…厭だ!!」
藻掻く夫人を見る2組の目は、無情そのものだった。
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ヤマダノオロチ(プロフ) - Yuukiさん» ありがとうございます!やっと構想がまとまってきました。これからもよろしくお願い致します! (2017年2月18日 23時) (レス) id: b2832ff97e (このIDを非表示/違反報告)
Yuuki(プロフ) - とても面白かったです!スランプで大変だと思いますが、これからも頑張ってください!応援してます!! (2017年2月18日 23時) (レス) id: 3720d37733 (このIDを非表示/違反報告)
ヤマダノオロチ(プロフ) - 天さんさん» コメントありがとうございます!上から目線だなんてそんな事無いですよ!?お褒めに預かり光栄です(>_<)最近はラブソングばっか聴いてて、主と中也くっつけたい〜とか考えてます(笑)これからも頑張ります! (2017年2月14日 20時) (レス) id: b2832ff97e (このIDを非表示/違反報告)
天さん - う、上から目線で失礼しましたぁああッ!! (2017年2月14日 19時) (レス) id: 6b9cd4fe2d (このIDを非表示/違反報告)
天さん - スランプ大変ですよね…文章とか読みやすくて好きです!頑張ってください(*´ω`*)ちなみに、私はスランプの時は曲を聞いてます。曲聞いてるとネタがポンポン出てきますので…!これからも応援してます(´˘`*) (2017年2月14日 19時) (レス) id: 6b9cd4fe2d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ヤマダノオロチ | 作成日時:2016年9月4日 20時